筆者は当欄でSARS-CoV-2のバイオセーフティ上での取り扱いと管理について、近い将来武漢株由来の病原性の高いSARS-CoV-2の管理の徹底が議論されることになる可能性について述べた。それは病原性のきわめて高い武漢株由来系統のSARS-CoV-2は私たちの社会から消え、相対的に病原性の低下した、一方で伝播性が高まったSARS-CoV-2オミクロン株の流行に置き換わっているからである。
2021年に流行したアルファ株やデルタ株系統のSARS-CoV-2による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者が確認されなくなってからゆうに1年(以上)は経過した。これにはSARS-CoV-2オミクロン株によるCOVID-19大規模流行が始まったことが寄与しているが、COVID-19ワクチン接種が国内外で強力に推し進められたことの影響も大きい。私は、オミクロン株によるCOVID-19流行が出現する前でも、COVID-19ワクチン接種政策を国内外で協調して継続することによりCOVID-19流行の根絶(eradication)や排除(elimination)は可能と考えていた。
実際、オミクロン株が出現する前のCOVID-19の病原体、いわゆる武漢株由来の病原性の高いSARS-CoV-2は既に私たちの社会から根絶されている可能性が高い。本欄で以前、「オミクロン株によるCOVID-19はCOVID-19にあらず、COVID-21あるいはCOVID-22などの名前に変更すべきではないか」と述べたこともある。武漢市から始まったCOVID-19が既に根絶されたとすれば、COVID-19対策は十分に成果を挙げたとも考えられる。
オミクロン株によるCOVID-19流行への対策は継続されることが重要であり、思いつくままその要点をいくつか挙げると以下のようになる。
今ではいわゆる感染症法上で位置づけが2類相当感染症から5類感染症に変更されたCOVID-19ではあるが、それへの対策の重要性に変わりはない。今でもオミクロン株によるCOVID-19流行の根絶はまったく不可能とは考えてはいない。
西條政幸(札幌市保健福祉局・医務・健康衛生担当局長、国立感染症研究所名誉所員)[オミクロン株][対策の継続]