株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】大規模症例対照研究ではフルオロキノロンによる心臓突然死リスク上昇を認めず?―アモキシシリン比較/Open Heart誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2024-01-23

最終更新日: 2024-01-23

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フルオロキノロン系抗菌薬は汎用される一方、QT延長に伴う心臓突然死リスク上昇への懸念が指摘されてきた[Liu X, et al. 2017]。しかしアモキシシリンとの比較ではリスクを増加させることはないようだ。デンマーク・コペンハーゲン大学のViktoría Ellenardóttir氏らが28万例を解析した結果として1月12日、BMJグループのOpen Heart誌で報告した。

【対象】

今回解析対象となったのは、デンマーク在住で心原性と思われる院外心停止(OHCA)を来した4万6578例と対照232890例である。OHCA例は全国レジストリから抽出、対照群は一般住民から年齢と性別、観察期間をマッチして抽出した。全体の平均年齢は71歳、66.8%が男性だった。

【方法】

まずこれら279468例をOHCA発生前14日以内(対照群は観察打ち切り直前14日以内)における服用歴をもとに、「フルオロキノロン」群(含・他剤併用)と「アモキシシリン」群(実薬対照)、「両剤非服用」群の3群に分けた(アモキシシリンを対照としたのは、心臓突然死リスクを上昇させないことが大規模観察研究で確認されているためだという[Ray WA, et al. 2004])。

そして「フルオロキノロン」群と「アモキシシリン」群それぞれのOHCAリスクを「両剤非服用」群と比較し、両群間に差があるかを調べた。リスク比較にあたっては、過去10年間に記録されていたCVリスク因子とCV治療薬(含・抗不整脈薬)を補正した。

【結果】

その結果、OHCA「発生」群におけるフルオロキノロン服用率は0.59%、「非発生」群0.14%だった(服用群におけるリスク増加幅は不明)。一方、アモキシシリン服用率はそれぞれ0.65%0.15%だった(こちらも増加幅不明)。次にフルオロキノロン群のOHCAリスクをアモキシシリン群と比較した。その結果、有意差は認められなかった。フルオロキノロン群におけるOHCA補正後オッズ比(OR)は0.9195%CI0.71-1.16)だった。

この結果は亜集団解析でも同様だった。すなわち、「性別」「65歳の上下」「CV合併症の有無」で分けて比較しても、フルオロキノロン群でORの有意上昇を認めた集団はなかった。

【考察】

Ellenardóttir氏らは本研究の強みを、「(心原性)突然死」診断の正確性(レジストリデータ。研究者の主観に基づかない)と解析対象数の多さに求めている。なお本研究と異なり、フルオロキノロンによる突然死リスク増加(vs. アモキシシリン)を報告する観察研究も存在する[Assimon MM, et al. 2022。しかし対象は透析例に限られていた。今回のEllenardóttir氏らの解析における慢性腎臓病患者の割合は、OHCA群の7.04%、対照群の2.09%だった。

英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)からは1月22日、経口・静注・吸引フルオロキノロン使用は他剤不適のケースに限るよう推奨が出された。目的は重篤、あるいは長期遷延有害事象の回避だという。

本研究に対する資金提供はなく、利益相反もないとのことである。なお責任著者のTalip E Eroglu氏には、OHCAの原因を探る多くの観察研究がある。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top