No.4781 (2015年12月12日発行) P.74
仲野 徹 (大阪大学病理学教授)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-02-01
週のうち半分くらいは大阪モノレールで通勤する。それほどしょっちゅう乗っているのに、この歳になっても、電車やバスと違って、なんとなくワクワク感がある。ゆっくり走るせいか、あまり混雑しないせいか、車内がのんびりしているのもいい。
本を読んだり、ラップトップで仕事をしたりすることもあるけれど、ぼんやりと乗客を眺めていることも多い。朝はたいがい同じ時間の同じ車両に乗るので、なんとなく顔見知りの人ばかり。
いつもきちんと背広を着ておられる初老の男性がいた。ある日、あれっと思った。いつもはないチーフが胸ポケットに入っていたのだ。その日を境に、見かけなくなった。3月下旬だったし、おそらくあれが退職の日だったのだろう。そこまで気が回らなかったけれど、ひとこと声をかけることができたらよかったかなぁと後悔。
この4月には、小学1年生がやってきた。最初はお母さんが同伴だけれど、いつの間にか1人に。あまりに不安そうなので、「おっちゃんが乗ってる時は、ちゃんと見張ってるから大丈夫やで」と言ってあげたかった。けど、むやみに話しかけて変質者に間違われたらいかんので、ぐっと我慢。その子も、夏休み前にはえらそうな顔で乗ってくるようになって一安心。
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