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特集:新型コロナ後遺症─これまでの対応と問題点

No.5208 (2024年02月17日発行) P.18

大塚勇輝 (岡山大学病院総合内科・総合診療科)

徳増一樹 (岡山大学病院総合内科・総合診療科)

植田圭吾 (岡山大学病院総合内科・総合診療科/漢方臨床教育センター)

大塚文男 (岡山大学病院総合内科・総合診療科/感染症内科/検査部/漢方臨床教育センター)

登録日: 2024-02-16

最終更新日: 2024-02-13

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2018年岡山大学医学部卒業。初期研修を経て総合内科・総合診療科に入局。2022年より助教として勤務。西日本の公的医療機関では初めてとなる新型コロナ後遺症専門外来の立ち上げに関わり,診療・研究・教育に携わっている。総合診療専門研修修了,医学博士,副病棟医長。(大塚勇輝,写真も)

1 はじめに

・いわゆる「新型コロナ後遺症」にいまだ多くの患者が苦しみ,わが国を含む世界的な社会問題となっている。

2 呼称と定義

・「新型コロナ後遺症」などの用語の定義は,医学的には統一されていない。
・NIHの「PASC」,WHOの「PCC」という用語には定義が定められ,2023年には診断基準案の提案もなされた。

3 コロナ・アフターケア外来とは

・罹患後慢性期にかけての症状の遷延に対し,専門外来であるコロナ・アフターケア(CAC)外来を開設した。
・1日1〜2人の新規患者を受け入れ,800人以上の患者を対面診療してきた。

4 疫学

・CAC外来へは,デルタ株流行時に感染者の約1.5%,オミクロン株では感染者の0.1%程度が受診となった。
・CAC外来の受診患者は若干女性が多く, 30~50歳代が60%,10歳代など若年者が14%だが,70歳代以上の受診は比較的少ない。
・オミクロン株に感染したと思われる症例では,95%の患者で急性期は軽症であったが,後遺症は残っている。

5 症状

・症状は多彩であるが,倦怠感・易疲労感が最多で,ブレインフォグは,特にオミクロン株で増加していた。

6 病態とメカニズム

・感染後の炎症と免疫応答,自己免疫反応,血栓・血管内皮障害,腸内細菌叢変化,自律神経・内分泌障害,ウイルス残存など,種々の仮説がある。
・抑うつ指数,FT4,倦怠感スケール,血中コルチゾール値の間に正の相関がみられる。
・倦怠感や味覚・嗅覚障害を随伴する患者では,それぞれ成長ホルモン低値,FT4高値,コルチゾール低値の傾向がある。

7 治療とマネジメント

・漢方薬の処方のほか,亜鉛補充,急性期の抗ウイルス薬やメトホルミンの処方にも,一定の効果が認められる。
・総合診療的なアプローチで,全人的なケアを心がけている。

8 今後の課題

・終診とできるまでに日数を要するほか,対応可能な医師・施設も不足している。

1 はじめに

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が2019年12月に初めて報告されてから,約4年が経過した。急性期治療薬やワクチンについて開発が進められるとともに罹患率や死亡率は低下し,世界保健機関(World Health Organization:WHO)は2023年5月に緊急事態宣言の終了を発表し,事実上の流行収束が宣言された。

日本でも同月より感染症法での位置づけが5類へと移行し,感染者数の全数把握や医療費の公費負担などが終了となった。しかし,急性期症状の後に持続・遷延する各種症状についてはいまだ知見が乏しく,多くの患者が苦しみ,また,日常生活が制限されることで,わが国だけでなく世界的な社会問題となっているというのが現状である。

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