そがわ式陥入爪治療法は2011年に筆者が独自に考案した陥入爪治療装具療法である1)2)。
本法の最大の特徴は,3次元装着による無痛治療である。本法の紹介,症例供覧,考察を行う。
2010年秋,筆者は陥入爪の良い治療法がなく,途方に暮れ腕組みをしていた。そのときふと気づいた。人が腕組みをするとき,右の上腕で左の手指を,左の上腕で右の手指を固定している。「そうだ,ワイヤー同士を交互に固定させればよい」。
第1世代はDFW(double fit in wire)法であった(図1a)。文字通り,お互いのワイヤーを引っ掛けあう構造である。強力な矯正が得られ大変好評だったが,個々の装具に電気溶接を要し高価であった。
その後,アロンアルファ固定(図1b,図1c),さらには光重合法(図1d),ガター法(図1e),2022年にサメ肌法(図1f)となり,大変使いやすい装具となった。
材料は当初,超弾性ワイヤーを検討したが,爪に合わせて加工することができないという欠点があり断念。歯科矯正用にも用いるバネ用ステンレスワイヤーを用いている。
SH(spring hook)ワイヤーの外観を図2aに示した。その名の通り,フックを爪縁に掛け,テコの原理とスプリングの反発力で爪の湾曲を矯正する。その原理図が図2bである。
実際の装着例での力点,支点,作用点を図2cに示した。SHワイヤーは太さが7種類あり,爪の硬軟により使いわける。本ワイヤーの矯正力はきわめて強い。矯正力不足で困ることはないが,過大(過剰)矯正には常に注意しなければならない。
そがわ式陥入爪治療法は,SHワイヤー法とそがわ式assistants(支援的手段)よりなる。その全容は表1の通りである。
単回SHワイヤー法は,1本のSHワイヤーを1回装着するのみで治癒に至る場合の治療法をいう。
以下に症例を供覧する。なお,以後の全症例で既往歴・家族歴とも特記すべきものはなしであった。
【症例1】 足の第2趾の例
患者:62歳 女性
症状:2週間前より左第2趾内側の発赤,疼痛(図3a)あり。
初診:202X年X月
治療経過:初診時0.25mmSHワイヤーを装着(図3b)。治療直後に疼痛は消失した。初診28日後,治癒していた(図3c)。ワイヤー除去後の姿を示す(図3d)。
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