耳垢が蓄積し外耳道を閉塞することを耳垢栓塞と言う。耳垢は外耳道表皮の落屑物や塵埃などが外耳道軟骨部の耳垢腺,皮脂腺,汗腺などの腺分泌物と混ざって生じたものである。通常は上皮の生理的移動(migration)や咀嚼運動とともに外方に移動して自然と排出される。耳垢は,黄白色の乾燥した乾性耳垢と,黄褐色ないしは黒褐色で水飴状の湿性耳垢に大別される。モンゴロイドでは乾性が多く,ネグロイドやコーカソイドは湿性が多い。湿性耳垢はネグロイドで99.5%,コーカソイド90%,中国人5%,韓国人10%,日本人16〜20%,台湾人40%と報告されている。また,日本国内でも地域差があり,北海道・沖縄には湿性耳垢が多い。
外耳道の視診から容易に診断を得られる。症状としては難聴・耳閉塞感・自声強聴・耳鳴り・めまい・慢性咳嗽・瘙痒感・耳痛,などが生じる。しかしながら,高齢者や補聴器装用者,施設入所者などでは無症状のことも多く,放置されていることもある。また,鑑別診断として耳漏,外耳道異物,外耳道湿疹,外耳道真珠腫,外耳道真菌症などがある。
耳垢栓塞では,洗髪後や水泳後に水が耳垢を膨張させて,急に症状が出現することも稀ではない。外耳道が完全に閉塞されると平均聴力は約40dBになるとされる。
米国耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会(AAO-HNS)が診療ガイドラインを出しているが,人種差があることと家庭医に向けたガイドラインであるため,耳鼻咽喉科医にアクセスしやすい日本国内においては必ずしも適当ではないものの参考となる。これによると,耳垢水を使用した耳洗浄を有効としており,綿棒などを使用しないことが予防になるとしている。また,補聴器を使用している場合には数カ月に1度耳垢栓塞の確認を行うことを推奨している。
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