No.5213 (2024年03月23日発行) P.14
登録日: 2024-03-19
最終更新日: 2024-03-19
2024年度診療報酬改定の最大のトピックは、看護職員や病院薬剤師など医療関係職種の賃上げに向け、外来・在宅、入院、訪問看護等のそれぞれに「ベースアップ評価料」が新設されたこと。厚生労働省が3月5日に発出した関係通知で、2月14日の答申時点では明らかにされていなかった基準や要件の詳細が示された。多くのクリニックが算定可能な「外来・在宅ベースアップ評価料」を中心に医療従事者の処遇改善における取扱いのポイントを解説する。
2024年度診療報酬改定においては、2023年12月20日の武見敬三厚生労働大臣・鈴木俊一財務大臣の折衝で決定した「看護職員、病院薬剤師、その他の医療関係職種の処遇改善(賃上げ)に向けて0.61%の診療報酬プラス改定を行う。2024年度にベースアップ分で2.5%の賃上げ、25年度に同じく2.0%の賃上げを行う」との方針に沿って、「ベースアップ評価料」が新設された。
新設されたのは、①初・再診時や在宅医療で算定する「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」、②同評価料(Ⅰ)で1.2%の処遇改善を行えない医療機関を救済する「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」、③入院で算定する「入院ベースアップ評価料」、④訪問看護ステーションで算定する「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅰ)」、⑤同評価料(Ⅰ)で1.2%の処遇改善を行えない訪問看護ステーションを救済する「訪問看護ベースアップ評価料(Ⅱ)」─の5種類。
5種類の評価料による収益は、全額医療従事者の処遇改善に充てることが求められる。どの職種や職員の賃上げを何%行うかについては、各医療機関に判断が委ねられており、公平性と納得感のある配分方法がカギとなりそうだ。
「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」は、外来医療や在宅医療を実施している医療機関(医科)を対象に、勤務する看護師や薬剤師などの医療従事者の賃金改善を実施している場合の評価。1日につき初診時:6点、再診時:2点、訪問診療時の同一建物居住者以外に訪問診療を行った場合:28点、同一建物居住者に訪問診療を行った場合:7点をそれぞれ算定できる。
答申では、①基本給など決まって毎月支払われる手当の引上げでの改善を原則とする、②2024年度と25年度において当該保険医療機関に勤務する職員の賃金改善計画を作成し、地方厚生局に報告する―ことが求められている。この2点を巡り3月5日の通知では、①について、賃上げを実施した項目以外の固定的な手当などの賃金水準を減額してはいけないことが示された。②においては、地方厚生局に届出する際に使用する「賃金改善計画書」や「賃金改善実績報告書」の様式(表)が公表された。
同評価料(Ⅰ)は患者一人につき算定する点数のため、対象となる医療従事者の配置数が多い医療機関では十分な処遇改善が行えないケースがあることから、救済措置として「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」を算定することで無床診療所の基準である「1.2%の賃上げ」を可能とする。
病院や有床診療所では、外来の場面で「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」、入院の場面で「入院ベースアップ評価料」を算定することで、「看護師や看護補助者、医療機関薬剤師等について2.3%の処遇改善を可能とする。
厚労省保険局医療課は、ベースアップ評価料について「全医療機関が広く算定できるような制度となるよう設計した」とコメントしている。
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)の点数は、最も低い同評価料(Ⅱ)1が、1日につき初診時・訪問診療時:8点、再診時1点、最も高い同評価料(Ⅱ)8が初診時・訪問診療時:64点、再診時:8点に設定された。8種類の中から各医療機関が賃上げへの補填状況などから評価料を選択する形になる。
計算式は、初診患者数・再診患者数、医療従事者数を踏まえ、厚労省が設定した計算式に沿って「1.2%の賃上げが可能となる最も高い評価料(Ⅱ)」を算出する。厚労省が公表している計算ツールはこちら。
また、2023年度に比べ、2024年度に対象職員の基本給等を2.5%以上の引上げ、2025年度に4.5%以上の引上げを実施した場合には、同評価料を「40歳未満の勤務医」や「事務職員」などの賃上げに充てることもできるとの取扱いが明確化された。