【CTは断層像,X線は投影像であるため,X線ではプラスチックを外す】
胸部X線撮影は,通常立位か臥位の状態で撮影します。X線装置のX線管からX線が放射され体を通過し,対側に設置したX線フィルムもしくはX線デジタル検出器に投影されます。体の前から後ろまですべての組織や物質をX線が通過し,その密度によってX線が異なる程度で吸収されるため,画像には様々な濃淡が現れます。
単純X線画像で視認分別できる濃淡は,大まかに黒いほうから空気,脂肪,軟部,石灰化(骨),金属濃度の5種類です。軟部濃度には液体も含まれますが,X線画像では軟部組織と液体の区別はつきません。プラスチックもX線を透過するため,軟部組織として表示されます。X線画像にプラスチックが写り込むと,画像は投影画像のため,体の中にあるのか外にあるのかの区別がつかず,形状によっては病変と誤認する可能性があります。金属は骨よりも真っ白に写り込み,診断に支障をきたすため,撮影前に取り外す必要があります。
胸部CT撮影では,患者は寝台に横たわり,寝台がドーナツ状のガントリーの中に入って撮影します1)。ガントリーに設置された,対になるX線管と検出器のシステムが患者の周りを回転し,X線が体を通過してどのくらい減弱したか,患者の体を通過したX線の情報を収集し,断層像が生成されます。画像の濃度となるCT値(Hounsfield unit:HU)は,水のX線吸収率を基準として計算され,代表的な物質は以下の通りです。空気:−1000HU,脂肪:−100HU,水:0HU,軟部:20〜60HU,血腫:〜60HU,石灰化(骨):1000HU,金属:>1000HU。さらに,造影剤を使用すると様々な造影効果が得られ,CT値の変化で病態を推論できます。これらのCT値を視認分別しやすくする方法としてwindow条件があります。
CT画像においても,プラスチックは軟部濃度として描出されます。ただし,CT画像は断層画像のため,存在部位が体内にはないことが明確に視認でき,画像診断に支障はありません。
一方で,金属はX線を強く吸収するので,金属から検出器の間のデータがほとんど欠落してしまいます。CT撮影原理として,最低限180°方向からデータを収集しているため,断層画像になると,金属部分を中心とした白黒の放射状のアーチファクト(金属アーチファクト)が出現し,診断に支障が出ます2)。したがって,CTでも金属類は撮影前に取り外しが必要です。湿布も金属とは異なりますが,同様にアーチファクトを引き起こす可能性があるため,撮影前に取り外す必要があります。
【文献】
1) 市川勝弘:CT super basic. オーム社, 2015, p2.
2) 市川勝弘:CT super basic. オーム社, 2015, p34.
【回答者】
町田 幹 日本医科大学付属病院放射線科講師
林 宏光 日本医科大学付属病院放射線科教授