外耳道炎はよくみられる疾患で,大きくわけると,①耳かきや爪などで触ることでできる耳の傷から細菌性の炎症が起こる急性外耳道炎,②アレルギーや慢性的な刺激による外耳道湿疹から始まる外耳道炎,③外耳道炎が難渋し皮膚の防御バリアが破綻して起こる外耳道真菌症,になる。特殊な外耳道炎として,起炎菌が緑膿菌で糖尿病患者に起こる悪性外耳道炎があり,外耳道炎から骨髄炎に波及することもある。
鼓膜炎は急性中耳炎の一種で,中耳に膿などが及んでいない鼓膜のみの炎症である。原因としては感冒による鼓膜の炎症が一番多い。そのほかに外耳道炎に続いて鼓膜にまで炎症が及ぶものや,時に綿棒などによる機械的刺激で鼓膜の一部にだけ炎症が起こるものもみられる。また,外耳の帯状疱疹,中耳結核や好酸球性中耳炎,ANCA関連血管炎性中耳炎などの特殊な中耳炎からの鼓膜炎や外耳道炎もみられる1)。
外耳道炎も鼓膜炎も耳の視診で診断が可能である。急性外耳道炎は外耳道に発赤,腫脹,耳漏などがみられる。外耳道湿疹は多量の落屑や外耳道の湿潤とともに発赤がみられる。外耳道真菌症は外耳道に糸状の真菌塊がみられることで診断に至る。
外耳道の清掃と適切な治療薬での局所治療が主体となる。外耳道を洗浄し,膿や落屑物を除去したあとに,抗菌薬を含んだ軟膏を塗布する。炎症が強いときには,抗菌薬やステロイドを含んだ軟膏を塗布したガーゼやゴッドスタインタンポンを挿入して,外耳道を圧迫する。
真菌症の場合は,鼓膜に穿孔がなければ真菌薬を外耳道に充塡して治療する。外耳道炎は細菌性炎症であることが多いが,真菌性炎症に移行していくことも多い。抗菌薬の投与で真菌症が悪化することもしばしばみられる。
治療に並行して,炎症を起こしている原因と思われる頻回の耳掃除や,イヤホンの長期使用などを禁止することも重要である。治療に抵抗する難治性の場合は,全身状態の確認が必要になる。糖尿病の既往や血糖のコントロール状態,また極度の疲労や他疾患での免疫不全状態の有無の確認も重要である。
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