政府は6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(骨太の方針2024)を閣議決定した。その冒頭では「我が国経済は現在、デフレから完全に脱却し、成長型の経済を実現させる千載一遇の歴史的チャンスを迎えている」として、賃上げの定着や投資の拡大などにより、新たな経済ステージへの移行を唱えている。
このため、人口減少が本格化する2030年度までの6年間について「経済・財政新生計画」を策定すると表明。財政健全化の必要性も強調し、25年度から27年度までの3年間は「これまでの歳出努力を継続する」と明記した。高齢化率の上昇、生産年齢人口の減少を見据えて「これまでと同様に医療・介護給付費対GDP比の上昇基調に対する改革」に取り組み、社会保障の持続可能性を図ると強調。具体的には、「ワイズスペンディングを徹底し、保険料負担の上昇を抑制することがきわめて重要」と述べ、昨年12月に閣議決定した「全世代型社会保障の構築を目指す改革の道筋(改革工程)」に基づき改革を進めるとしている。
「経済・財政新生計画」の主要分野ごとの基本方針と重要課題では、「医療・介護サービスの提供体制」についても取り上げている。特に2040年頃を見据えた新しい地域医療構想について、「法制上の措置を含めて検討し、24年末までに結論を得る」と記述。その具体的な内容として、構想の対象範囲をかかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体に拡大すること、さらに病院機能の分化・連携、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援のあり方等を列挙している。
さらに医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の偏在是正についても「総合的な対策のパッケージを24年末までに策定する」ことも盛り込んだ。医師養成過程での地域枠の活用、大学病院からの医師派遣、総合的な診療能力を有する医師の育成、リカレント教育、経済的なインセンティブ、医師少数区域等での勤務経験を求める管理者要件の大幅拡大―などが対策として列挙されている。
このほか医療DXについては、政府を挙げて着実に推進していくと強調。なお、6月11日に公表された原案では、医療・介護DXの推進により、「医療費適正化の取組を強化するための必要な法整備を行う」とされていたが、医療界からの反発を受けて21日の最終版では「医療の効果的・効率的な提供を進めるための必要な法整備を行う」に変更された。