前回のコラム(No.5225)の内容に間違いがありましたので、最初に訂正させていただきたく存じます。スウェーデンには開業医がいないと書いてしまいましたが、これは間違いでした。スウェーデンにも開業医は存在します。大変に申し訳ありません。
この間違いに気がついたのは、たまたま開業医のクリニックで働いている女医のAnnaさん(仮名)にお会いする機会があったからです。自分の書いたことを思い出して冷や汗が出ました。同時に、スウェーデンの開業医はどのような位置づけなのか、なぜそのようなめずらしい職場で働いているのか、気になったのでインタビューさせてほしいとお願いしたところ、匿名なら、ということでお受け頂くことができました。ただし、そもそもスウェーデンの医療システムを理解するのに時間がかかったため、今回と次回、2回にわけてインタビューの内容をお届けしたいと思います。
まずスウェーデンの医療施設はプライマリ・ケアセンターとも呼ばれる総合診療クリニックと総合病院とにわけられます。2010年までは、限られた医療行政区以外、どちらも公営のみでしたが、2010年に、それまで社会保険番号で自動的に割り振られていた「かかりつけ医」を自由選択にする政策の一環として、プライマリ・ケアへの民間企業の参入が認められました。現在では国内クリニックの約40%が民営です。総合病院は今のところ85%が公営です。ただ民営クリニックの経営母体は企業のことが多く、Annaさんの説明によると大手数社が国内市場を独占しているとのことです。このようにスウェーデンの医師・看護師のほとんどは被雇用者ですので、「開業医」はいるにはいるが大変めずらしい、ということになります。
しかしAnnaさんの勤務先は、10年前に3人の女性医師が開業したクリニックです。現在、5人の総合医療専門医、3人の研修医、1人のインターン、5人の看護師、2人の准看護師が勤務しています。Annaさんはここで週3日勤務しています。どのようにこのクリニックで働くことになったのか、なぜ週3日のみの勤務なのか。そこにはスウェーデンの総合医療専門医の直面している課題がありました。次回はその課題について、Annaさんの経験を共有したいと思います。
渡部麻衣子(自治医科大学医学部総合教育部門倫理学教室講師)[開業医][総合診療専門医]