【概要】2015年度予算案が閣議決定された。医療関係費は約11.5兆円と前年度比2.6%増。「社会保障の充実」分として「基金」の介護分が新たに確保されたほか、難病等対策が大幅に増額された。
政府が14日に閣議決定した15年度予算案のうち、社会保障関係予算(表1)は、総額29兆4505億円となり、前年度より3.2%増えた。医療・介護関係費はそれぞれ前年度比2.6%増だった。
高齢化などに伴う社会保障の「自然増」は、概算要求で約8200億円を見込んでいたが、予算案では約5700億円となり、2400億円程度圧縮された。これについて厚労省は「1人当たり医療費の伸びが鈍化したことを加味したため」と説明している。
消費税増収分を主要財源とする「社会保障の充実」関係予算(表2)は総額1兆3620億円、うち医療・介護分は8411億円。
このうち、地域の実情に応じた医療・介護提供体制の構築に向けた都道府県の事業に対して交付される「地域医療介護総合確保基金」の医療事業分には、14年度と同額の904億円が確保された。15年度から新たに交付対象となる介護事業分としては724億円が計上された。
今年1月から助成対象疾患が拡大された難病と小児慢性特定疾病への対応としては、前年度比約7倍の2048億円が計上された。
●認知症治療拠点60カ所以上増へ
15年度予算における医療・介護関係の主要施策(表3)をみると、4月に行われる介護報酬改定は、改定率マイナス2.27%で決着。職員の処遇改善分などを除くとマイナス4.48%の引下げとなった。
48億円を計上した認知症対策では、「認知症施策推進5カ年計画」(オレンジプラン)を改め、新たな総合戦略を策定し、早期診断・早期対応を軸とする医療・介護提供体制を目指す。認知症専門医の指導の下に保健師・介護福祉士などが自立生活支援を行う「初期集中支援チーム」を現行の100カ所から316カ所とするほか、専門医療機関の「認知症疾患医療センター」を300カ所から366カ所に増やす。
●新たな保険外併用療養導入で調査
医薬品関連では、新たな保険外併用療養として創設が決まった「患者申出療養制度(仮称)」に関して、患者のニーズや海外の状況を調査する。費用対効果が低いと評価された保険適用の医療技術をいったん保険外に戻す「逆評価療養」の導入を視野に入れた指標開発等に関する調査も行うとしている。
このほか、今年10月に施行される医療事故調査制度において、事故原因を調査する民間の第三者機関の支援にかかる費用として、5.4億円が新規に計上された。
●補正でスプリンクラー補助などに258億
政府は9日に2014年度補正予算案を閣議決定している。この中では、スプリンクラーなど防火設備を設置する有床診療所・介護施設や、耐震化を行う災害拠点病院などへの補助金として258億円が計上された。