骨髄炎は,細菌をはじめ抗酸菌,真菌など病原体が骨に感染して起こる骨の炎症,およびそれに伴う骨の破壊性変化である。このうち急性発症するものを急性骨髄炎,慢性化しているものを慢性骨髄炎と言う。急性骨髄炎が過去にあり,それが慢性化したものが多い。感染,炎症は骨髄を中心に,骨皮質や骨膜にも生じる。
病態は様々であるが,発症時期による分類では,発症後2週間以内を急性骨髄炎,発症後10週以上を慢性骨髄炎と考える。
末梢骨の急性骨髄炎の患者は通常,限局性の熱感,腫脹,発赤,疼痛という局所症状に加え,発熱,全身倦怠感,易疲労感,進行すれば体重減少といった全身症状を伴うことが多い。慢性骨髄炎との主な違いは,このような全身症状を伴うか,局所症状の強弱である。慢性骨髄炎では総じて,急性骨髄炎に比べて症状に乏しい。瘻孔がある症例では,瘻孔からの排膿のみが症状であることが多い。
血液検査:CRPや赤血球沈降速度の上昇,白血球増加などの所見を認める。ただし慢性骨髄炎では,これらがあっても軽度である。
単純X線:骨萎縮像や骨融解像,不規則な骨硬化像,骨膜反応といった所見を認める。ただし起炎菌や炎症の程度により,顕著な所見を呈さないこともある。慢性骨髄炎では骨髄腔の閉鎖,骨梁構造の消失,骨萎縮,不規則な骨硬化像,骨皮質の肥厚などが混在し,病状の経過に応じて多彩な所見を呈する。
CT:単純X線と同様の所見を呈する。より詳細な観察が可能になる。
MRI:膿瘍形成があればそれを検出することや,骨外軟部組織への炎症の波及を観察することもできる。病巣の範囲を確認するには必須の検査である。ただし,MRIで異常信号のある領域すべてが骨髄炎を反映しているとは限らない。
骨シンチグラフィ:テクネチウム99mを用いた放射性同位体による骨シンチグラフィを行ってもよい。高集積像としてとらえられることが多い。しかし,感染,骨折および腫瘍の鑑別はできない。
細菌培養検査:血液培養を実施するとともに,症状を呈している局所において穿刺による膿瘍の吸引,または外科的デブリードマンによって深部組織検体を無菌的に採取する。複数の検体で同じ菌種が検出されれば病原体である可能性が高く,抗菌薬感受性試験を行うことで適切な抗菌薬の選択につながる。
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