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看取り期に家族が最期まで点滴を希望される場合[たんぽぽ先生の〈パターンで考える〉在宅医療の実践(2)]

No.5239 (2024年09月21日発行) P.36

永井康徳 (医療法人ゆうの森たんぽぽクリニック)

登録日: 2024-09-23

最終更新日: 2024-09-20

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「終末期の点滴の悪循環」亡くなる最期まで点滴をしていませんか?

老衰や病気で死期が近づいてくると,口から飲んだり食べたりができなくなります。なぜ,亡くなる前に食べられなくなるかというと,身体のすべての機能が低下していくために,水分すら体内で正常に処理できなくなるからです。このような状態で,強制的に点滴等の人工栄養で水分や栄養を取り入れていくと,水分が体外に排出されないため,身体がむくんだり,腹水や胸水が溜まったり,痰や唾液が増えたりと,患者さんをかえって苦しめてしまうことになります。

「枯れるように亡くなる」。穏やかな死をこのように表現することがありますが,それは余分な水分で身体をだぶつかせることなく,草や木と同じように自然なままに静かに息を引きとるような状態のことを言うのだと思います。食べられないから亡くなるのではなく,亡くなる前だから食べられないのです。

私は「身体で水分が処理できなくなったら,できるだけ脱水の状態にして自然に看ていくのが最期を楽にする方法ですよ」と説明しています。しかし,日本のほとんどの病院では,終末期であっても亡くなるまで点滴をしていることがまだまだ多いようです。体内で処理されない余分な水分で,身体はむくんでパンパンになり,唾液や痰が増えれば喀痰吸引が必要になります。誤嚥性肺炎の予防のために絶食指示が出され,患者の摂食・嚥下機能がますます低下していきます。点滴や喀痰吸引といった医療処置が24時間必要なら,退院して自宅で介護をするのは難しいと,医師も家族も考えてしまいます。そうして患者は,自宅に戻れずに病院で亡くなることになるのです。これが終末期の点滴の悪循環です。この悪循環が続く限りは,自宅での看取りは普及しないと,私は考えています(図1)。

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