【概要】中医協総会は2016年度の次期診療報酬改定に向けた議論を開始した。在宅専門クリニックの開設要件緩和や、在宅を巡る評価のあり方について意見交換が行われた。
中医協(森田朗会長)は18日に総会を開き、「在宅医療」をテーマに、2016年度の次期診療報酬改定に向けた議論を開始した。
厚労省が論点の1つとして提示したのは、「在宅医療専門クリニック」のあり方について。在宅医療専門クリニックに関しては、現行の健康保険法上で明確な規定はない。健保法の「保険医療機関はすべての被保険者に対して療養の給付を行う開放性を有する」との表記に基づき、いわゆるフリーアクセスを担保しているとの解釈から運用上、「外来応需の体制」の確保を求めており、現状では在宅医療のみを行う医療機関について認めていない。
●政府は「外来応需」の検討求める
一方、在宅医療推進の観点から、政府は昨年6月に閣議決定した「規制改革実施計画」で在宅医療専門クリニックに触れ、「外来応需体制を求めた運用のあり方を検討し、結論を得た上で、必要な措置を取る」として、実質的な見直しを求めている。これを受け、厚労省は中医協に対し、「医学的に必要な場合の往診の実施」「訪問診療に関する相談に応需する」などの「客観的な要件」を示すことを提案した。
厚労省の提案に対し、鈴木邦彦委員(日医)は、「今後も在宅医療はかかりつけ医の外来の延長としてあるべき。外来をやらなくてもいいとなると、軽症者も在宅で診ることになりかねない」と指摘。中川俊男委員(日医)も「かかりつけ医が外来で診ていた患者の状態が悪くなり、患者宅を訪問するのが在宅医療の大原則」とした上で、「都市部では在宅のニーズが急激に増加するため、補完する形で眼科や緩和ケアなどの専門医がかかりつけ医と連携して在宅医療を行うことが望ましい」との考えを示した。また、「前回の改定では、在宅医療のモラルハザードがあったことがきっかけとなり診療報酬を大幅に見直さなければならなかったことを教訓にすべき。慎重さが必要ではないか」とし、「外来応需体制」の見直しによる影響を懸念した。
一方、支払側の白川修二委員(健保連)は、「在宅医療の基本はかかりつけ医」という方向性は「否定するものではない」としながらも、「残念ながら、すべての医師が訪問診療に対応できるところまで進んでおらず、バリエーションが必要な現状。患者側の選択権を考慮した診療報酬上の評価を考えてもらいたい」と述べ、厚労省案について議論を深めるべきとの考えを示した。
●医療内容に応じた評価体系がカギ
在宅医療の評価を巡っては14年度改定で潮目が変わった。在宅への参入を促すこれまでの「在宅優遇」の流れから、集合住宅への訪問診療における不適正事案をきっかけとした「同一建物同一日」の大幅引下げが実施されるなど、適正化に大きく舵が切られた。次期改定でも適正化の方向性は継続される見込みで、そのうち柱となるのは「提供する医療内容に応じた評価」のあり方だ。
厚労省の調査によれば、在宅患者のうち約45%は「健康相談」「血圧・脈拍の測定」「服薬援助・管理」のみに該当しており、提供する医療内容の差が大きいことが明らかとなっている。在宅医療の診療報酬は主に「訪問」と「医学管理」からなり、特に医学管理料の評価は高いことから、提供する医療内容でどう差別化するかが今後の争点となる。
【記者の眼】次期改定に向けた議論がスタートした。第1回目のテーマは在宅医療の評価について。医療内容に加え、増加する認知症への対応や看取りへの取り組みなどをどう評価するかが今後の検討課題となる。(T)