株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

周期性四肢麻痺[私の治療]

No.5248 (2024年11月23日発行) P.38

久留 聡 (国立病院機構鈴鹿病院脳神経内科/院長)

登録日: 2024-11-21

最終更新日: 2024-11-19

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 骨格筋細胞膜の興奮性異常により,発作性に四肢脱力をきたす疾患である。発作極期の血清カリウム値により,低カリウム性周期性四肢麻痺(hypokalemic periodic paralysis:HypoPP)と高カリウム性周期性四肢麻痺(hyperkalemic periodic paralysis:HyperPP)とにわけられる。また,一次性(遺伝性)と二次性(非遺伝性)に分類される。

    ▶診断のポイント

    発作は弛緩性麻痺が下肢から上肢へ広がるが,限局性の場合もある。通常,眼球運動障害,呼吸障害,膀胱障害はきたさない。下記の病型診断のためには遺伝子検査,甲状腺機能検査が必要である。

    【HypoPP】

    発作は夜間に起こりやすく,持続時間は数時間〜数日と比較的長い。前日の過剰な運動や飲酒,炭水化物の過剰摂取,精神的ストレスが誘因となりやすい。骨格筋型電位依存性カルシウムイオンチャネル(Cav1.1)をコードするCACNA1S遺伝子や,骨格筋型電位依存性ナトリウムチャネル(Nav1.4)をコードするSCN4A遺伝子の変異が原因であると報告されている。常染色体顕性(優性)遺伝形式をとる。

    【HyperPP】

    発作は朝食前に起こりやすく,持続時間は数十分〜1時間と短い。運動や寒冷,カリウム摂取が誘因となる。SCN4A遺伝子の変異が原因であると報告されている。

    【Anderson-Tawil症候群】

    周期性四肢麻痺(periodic paralysis:PP)と不整脈・心電図異常,先天小奇形(眼間解離,耳介低位,下顎低形成など)を三主徴とする遺伝性疾患(常染色体顕性)である。内向き整流性カリウムチャネル2.1(Kir2.1)をコードするKCNJ2遺伝子変異が報告されている。

    【二次性(孤発性)PP】

    上記の遺伝性のPPよりも,むしろ日本では孤発性が多いとされる。甲状腺機能亢進症に伴うものがよく知られている。ほかに薬剤性(サイアザイド系利尿薬等)のものや,原発性アルドステロン症,Bartter症候群,腎尿細管性アシドーシス,下痢,吸収不良症候群に伴う症候性のものが知られる。

    残り1,236文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top