腸球菌が原因菌となる主な感染症は,尿路感染症,腹腔内感染症,細菌性心内膜炎,血流感染症などである。バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci:VRE)は,腸球菌のうちバンコマイシンに対して耐性化したものを示す。感染症法ではバンコマイシンのMIC値が≧16μg/mLである腸球菌について,感染症原因菌と判断した場合には届出義務がある(5類全数把握)。
腸球菌は腸管内常在菌であり,臨床検体から検出されたからといって即座に治療対象となるわけではない。一方で,血液や髄液などの無菌検体からの検出や,感染徴候を伴う患者の臓器(例:腎盂腎炎疑いの患者の尿培養,腹腔内膿瘍の膿培養など)より検出される場合には治療の対象とする。
感染症治療の大原則として,感染症原因菌の薬剤感受性結果に沿った抗菌薬投与を行うべきである。
バンコマイシン耐性Enterococcus faeciumは,β-ラクタム系薬とアミノグリコシドに対して同時に高レベルの耐性を示すことがある。対照的に,バンコマイシン耐性のE. faecalisは,E. gallinarumおよびE. casseliflavusと同様にペニシリン系薬に感受性が残されていることがあり,その場合はペニシリン系薬も治療薬の選択肢となる。
VRE治療薬であるリネゾリド,比較的新規に開発されたダプトマイシンおよびチゲサイクリンは,バンコマイシン耐性のE. faecalisとE. faeciumの両方に対して活性がある。
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