性器ヘルペスは,単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)1型もしくは2型の感染により,性器を含む外陰部に疼痛を伴う潰瘍や水疱を形成する疾患である。心身の疲労や性行為を契機に,潜伏感染しているHSVが再活性化して再発する感染症である。性器ヘルペス患者は,臨床症状の自覚なくウイルスを無症候性排泄する場合がある1)。また女性では,仙骨神経障害により排尿・排便困難を認めるElsberg症候群を発症することがある。
再興感染症のひとつである梅毒も侵入門戸となる外陰部に潰瘍性病変を形成するため,鑑別は必要である。性器ヘルペスは梅毒の病変と異なり,疼痛を伴う潰瘍と水疱性病変が混在し自然に消退しない。また,初感染時と異なる部位(臀部や大腿部など)に再発する例もある。
検査は抗原診断法や核酸診断法がある。抗原診断法は簡便で,15分前後でウイルスの有無は明らかになるが,HSV-1,2の型判別はできない。real-time PCR法による核酸診断法は,免疫不全状態にて1回のみ算定可能である。
初発病変に対しては,診断後速やかに治療を開始する。抗ヘルペスウイルス薬の投与により,潜伏感染するウイルス量が減少し再発抑制効果を示す。そのため,初発時には内服もしくは点滴療法で十分に治療する。
性器ヘルペス患者の6~7割が再発例であり,生涯を通じて再発が多い感染症である。再発時の治癒期間を短縮させるために,あらかじめ内服薬を処方しておくpatient-initiated therapyが可能である。
抗ヘルペスウイルス薬は腎臓で排泄されるために,腎機能障害のある患者では腎機能に応じて投与量を調節しなければならない。
残り1,472文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する