社会保障審議会医療保険部会は12月12日、高額療養費制度について自己負担限度額の引き上げや所得区分の細分化などを柱とする見直しの方向性を了承した。部会の議論は今回で終了。70歳以上の高齢者が対象の外来受診時の自己負担限度額(外来特例)については、存廃を巡る意見の対立が続き、意見集約には至らなかった。今後、部会の議論を引き取る形で厚生労働省が最終調整を進め、2025年度予算の編成過程で自己負担限度額の引き上げ率を含む見直し案を確定する。
見直しの方向性は、セーフティネットとしての高額療養費の役割を維持しつつ、健康な人を含めたすべての世代の被保険者の保険料負担を軽減するため、(1)自己負担限度額を一定程度引き上げる、(2)所得区分に応じたきめ細かい制度設計となるよう、住民税非課税区分を除く所得区分を概ね3区分に分割し、所得区分を細分化する―と記載した。
負担能力に応じた負担の実現を目指し、自己負担限度額の引き上げ率は、平均的な収入を超える所得区分は平均的な引き上げ率よりも高い率とする一方、平均的な収入を下回る所得区分(年収約370万円未満)に対しては引き上げ率を緩和する配慮措置を講じる方針を打ち出した。施行時期は、国民への周知や保険者・自治体のシステム改修等に要する準備期間を十分に確保できるよう、早くても25年夏以降とする。外来特例の取り扱いには触れなかった。
また、厚労省は同日の部会に自己負担限度額を仮に10%引き上げた場合に、自己負担額がどの程度増えるのかを試算した結果を報告した。それによると、かかった医療費が300万円のケースにおける現行および見直し後の自己負担額は、①70歳未満で年収約370万円~770万円/現行10万7430円、見直し後11万5173円、②70歳以上の住民税非課税世帯/現行2万4600円、見直し後2万7060円―になることを示した(いずれも所得区分の細分化は考慮していない)。