高齢者や糖尿病患者の急増に伴い,下肢に慢性的な創傷を有する患者も増加傾向にある。創傷を発生する要因としては「動脈」血流が不足する末梢動脈疾患(PAD)によるもの,「静脈」うっ滞に起因するもの,「リンパ」うっ滞に起因するもの,糖尿病性神経障害に由来するものなどがある。発生原因を特定し,それぞれに対処することで創傷治癒を促すことができる。
動脈血流を確認するために触診は最重要である。両足を同時に触れることで左右の温度差を確認できる。また,足背動脈,後脛骨動脈,膝窩動脈,浅大腿動脈の拍動を確認することでどこまで血流が保たれているかを把握することが可能である。客観的な検査としては,ドップラー計による動脈拍動の聴取や,上腕と下腿の血圧比を計算するABI検査,ポータブルエコーによる血管の目視などが挙げられる。
静脈うっ滞による潰瘍では下肢を下垂することで表在静脈が怒張する所見がみられる。創部の特徴としては下腿の内側に有痛性の潰瘍を発生することが多く,周囲にヘモジデリンと炎症に伴う色素沈着を認める。客観的にはエコーにて表在静脈の逆流や深部静脈の閉塞などで診断される。
リンパうっ滞による潰瘍の場合,指で押し圧痕が残る浮腫が認められれば診断は容易である。原因は腫瘍による閉塞や手術後などの二次的に発生する場合と,原因不明の特発性のものがある。在宅高齢者の場合では,足を下ろしたまま動かないことによる「廃用性のリンパ浮腫」が広く見受けられる。
糖尿病性神経障害による潰瘍の特徴は,感覚障害により痛覚が消失している点である。運動神経障害により筋肉が萎縮し変形が生じる。典型的な足部の変形としては,趾の先端が丸まってくる「ハンマートゥ」「クロートゥ」と呼ばれるものや,足底が船底型に突出する「シャルコー変形」などが有名である。
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