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慢性膵炎[私の治療]

No.5262 (2025年03月01日発行) P.50

菊田和宏 (東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野非常勤講師)

正宗 淳 (東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野教授)

登録日: 2025-03-02

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  • 慢性膵炎とは,「遺伝的や環境要因,その他の危険因子を有し,実質への傷害やストレスに対して持続的な病的反応を生じる個人に起きる,膵臓の病的線維化炎症症候群」1)である。潜在期〜代償期は腹痛が主症状であるが,病態の進行とともに腹痛は軽減し,膵内外分泌機能障害が進行していく(移行期)。非代償期になると腹痛はさらに軽減し,膵内外分泌機能障害が主症状となる2)

    ▶診断のポイント

    特徴的な画像所見などに基づき,「慢性膵炎臨床診断基準2019」1)を用いて診断する。他の膵疾患,特に膵癌,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)との鑑別が重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    慢性膵炎の治療においては,成因をふまえた生活指導とともに,病期や病態に適した食事指導,薬物療法,内視鏡的治療,外科的治療などが行われる。生活指導の基本は,断酒と禁煙である。食事指導では,腹痛や背部痛を繰り返す時期には低脂肪食(1日の脂肪摂取量30~35g)とする。しかし,脂肪制限を長期に続けると脂溶性ビタミンや微量元素の欠乏が懸念されるため,腹痛がない時期には蛋白質や脂肪の摂取量を増やす必要がある。

    病期は潜在期,代償期,移行期,非代償期に大別される。代償期には腹痛・背部痛のコントロールと急性増悪の予防に対する治療が中心となる。生活指導,食事指導に加えて薬物療法を行う。腹痛・背部痛に対してはまずNSAIDsを用いるが,効果が不十分の場合はオピオイドの使用を検討する。保存的治療無効例については専門医に相談し, 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)を含む内視鏡的治療や外科的治療を検討する。

    非代償期には膵内外分泌機能低下による膵性糖尿病,消化吸収不良症状,栄養障害に対する治療が中心となる。栄養状態の改善・維持が優先されるため,高血糖の回避を目的とした不適切なエネルギー制限は行わない。膵外分泌機能不全に対しては十分量の膵消化酵素補充療法を行い,その上で膵性糖尿病のコントロールを行う。インスリン依存状態であればインスリン療法を行う。インスリン抵抗性が疑われる,またはインスリン分泌能が保たれている膵性糖尿病に対しては,経口血糖降下薬の投与を検討する。

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