皮膚軟部組織感染症は,皮膚軟部組織の浅層に発生する膿痂疹や丹毒,蜂窩織炎といった日常診察で遭遇する疾患から,より深部に発生し重篤な経過をたどる壊死性軟部組織感染症(necrotizing soft tissue infection:NSTI)まで幅広い病態を含む。ここではNSTIの治療について述べる。
NSTIは敗血症の原因疾患のうち3%程度を占めている。通常は疼痛や皮膚発赤といった訴えがあるが,意識障害を併発している敗血症患者の感染focusとして見落とされがちであり,注意が必要である。聴取内容としては既往歴や内服薬のほか,先行する外傷episodeや発症からの経過時間などとなる。起因菌によっては数時間単位で病勢が進行し致死的になりうる。また局所症状のみなのか,随伴する全身症状がないかを確認する。高体温・低血圧・皮疹を伴う場合は,毒素性ショック症候群を合併している可能性がある。特にNSTIには連鎖球菌性毒素性ショック症候群(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)を合併しやすい。
まずはバイタルサインを確認する。バイタルサインが安定しているようであっても,ぼんやりしている,普段と様子が違う,などがみられる場合は,敗血症を併発している可能性がある。
NSTIの局所初見としては,発症早期から疼痛,紅斑,浮腫を認め,進行すると水疱や握雪感,皮膚壊死を認める。早期のNSTIと通常の蜂窩織炎の鑑別は困難な場合が多く,視診や触診では判断がつかないことも少なくない。その場合は造影CT・試験切開を考慮する。
敗血症・敗血症性ショックであると判断した場合は,検査よりも初期蘇生を優先する。静脈路確保,輸液,昇圧薬(ノルアドレナリン)投与を行い,並行して血液培養採取と広域抗菌薬投与を行う。ショックが遷延する場合は気道確保が必要である。
一手目 ラクテックⓇ注(L-乳酸ナトリウムリンゲル)500mL全開投与
二手目 〈一手目に追加〉ノルアドレナリンⓇ注(ノルアドレナリン)3mgを生理食塩水47mLに溶解し,3mL/時から持続投与開始
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