(概要) 中医協では2016年度診療報酬改定に向けた議論が動き出した。外来では主治医機能の強化、在宅では患者の疾患や状態に応じた評価の導入などが論点に上がっている。
中医協総会は2016年度診療報酬改定に向け、入院、外来、在宅医療についての議論を開始した。そのうち外来では「外来の機能分化・連携を推進する方策」「重複投薬や残薬を減らす方策」「主治医機能の強化を含め外来診療の質の向上と効率化を図る方策」、在宅については、「患者の疾患・状態に応じた評価の導入」「訪問頻度に応じた評価体系」「在宅専門クリニックの開設要件緩和」などがポイント(別掲)だ。
●残薬解消に向け長期処方制限へ
外来の機能分化・連携については、4月8日の会合で厚労省が「紹介状なし」の外来受診者数の低下や、外来による勤務医の負担感が減少していることを示すデータを報告。しかし、大病院の初診と再診の割合は1:9で、紹介状なしの外来受診者の割合についても、減少傾向にはあるものの特定機能病院で約6割となっている。今国会で紹介状なしの大病院受診時の定額負担導入が決まったが、診療報酬上でもさらなる機能分化を促す方策を検討することになる。
重複投薬・残薬の問題では、厚労省の調査で年間の重複投薬が約117万件と推計されることや、「残薬がある」と答えた患者が9割に上ることが明らかとなった。残薬については、長期処方が問題視されており、長期処方を制限する見直しが検討される。
主治医機能の強化については、2014年度改定で新設された地域包括診療料/加算を診療側、支払側ともに現時点では評価。慢性疾患を抱える高齢者に重複受診が多いなどのデータもあり、次期改定でも主治医機能を評価する方向性は継続される見込みだ。
訪問頻度による評価が争点の1つ
在宅医療は現在、在宅療養支援診療所であるかなど提供側の体制によって評価が行われている。14年度改定では「同一建物同一日」の場合の訪問診療料や在宅時医学総合管理料などが引き下げられたが、次期改定では疾患や重症度など患者の状態像や、診療頻度に応じた評価の導入が課題だ。
厚労省の調査では、訪問診療の54%は人工呼吸器の管理や胃瘻など何らかの医療行為を行っているが、46%は健康相談や血圧・脈拍の測定、服薬援助・管理のみにとどまり、診療時間や入院回数などは、医療行為の有無による差が大きいことが明らかとなった。また、訪問診療を行う頻度では、患者の重症度や満足度に大きな差異は見られなかった。
こうした現状を踏まえ、訪問診療に患者の疾患・状態に応じた評価という視点を加える方向性は中医協で概ね支持が得られた。一方、「1カ月に2回以上の訪問」が要件の医学管理料については、月1回の訪問診療で算定可能とするかが争点となる。
このほか、在宅専門クリニックの開設要件を巡っては、診療側が「在宅はかかりつけ医の延長」との考えから「外来応需原則」を堅持すべきと訴える一方、支払側は在宅推進の観点から一定の緩和は必要と主張している。政府は実質的には要件緩和を求めていることに加え、都市部の在宅サービスの不足は深刻で、診療側にとっては厳しい議論となりそうだ。