県中山間部の公立病院で内科医として働いていると、世帯の核家族化に地域の過疎化が加わった結果、高齢者夫婦のみの世帯や高齢者単身世帯の割合が増えていることを実感する。入院が必要であった高齢肺炎患者の経過について統計をとり、どのような因子が肺炎による死亡率に影響したかを調べて県医師会の医学雑誌に報告したが1)、肺炎の重症度、年齢、栄養状態、脳卒中の有無などのこれまでにも知られている悪化因子に加えて、一人暮らしであることが肺炎による死亡率の増加に関わった可能性があることがわかった。
一人暮らしであっても大半はかかりつけ医がいるが、近くに頼むべき介護者がいない場合、肺炎が発症しても入院までに日数がかかり、重症化する危険性のあることが読みとれた。元も核家族であったが子どもたちは各々新しい家族を作って都市部に住むようになり、高齢者夫婦のみの世帯や高齢者単身世帯になってからのほうが既に長いのである。
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