株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

「全体でプラス」求め行動最終局面 - 医療関係団体、自民党厚労系議員 [診療報酬改定率]

No.4782 (2015年12月19日発行) P.9

登録日: 2015-12-19

最終更新日: 2016-11-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

(概要) 年末の予算編成過程で決着する診療報酬改定率。財務省・厚生労働省の間で折衝が行われる中、診療報酬全体でのプラス改定を求める医療関係団体と自民党内の動きを紹介する。

日本医師会など医療関係40団体で構成する「国民医療推進協議会」(横倉義武会長)は9日、都内で総決起大会を開き、(1)国民に必要かつ充分な医療を提供するための適切な財源の確保、(2)医療機関の控除対象外消費税問題の抜本的解決─を求める決議を採択した。

●マイナス改定は雇用にも悪影響─横倉会長
大会後の会見で横倉会長は「適切な財源」として「ネット(全体)プラス」の改定を求めていく姿勢を強調した。
また、地方では医療が産業として大きな雇用誘発効果を持っているとして、「診療報酬が引き下げられれば医療機関の経営はより厳しくなり、雇用にも影響が出る」と指摘。医療の充実が経済を活性化し、「地方創生」にもつながると訴えた。約300万人の医療従事者の雇用を守るのに必要な財源規模については、2015年度春闘における賃上げ率を給与に換算し、「1200億円程度」との試算を示した。
大会には、約2000人の医療関係者が参加。自民党の高村正彦副総裁をはじめ、国会議員約80人も駆けつけた。高村副総裁は「医療は安全・安心な生活を送る上で不可欠な基盤。過不足ない財源投入が必要と認識している」と述べた。

●改定率、薬価差財源が焦点
改定率を巡る焦点は、薬価の引下げで生じる「薬価差財源」だ。2014年度改定は全体では0.1%のプラス改定だったが、薬価のマイナス改定分(マイナス1.36%)と消費税率引上げの補填で診療報酬本体に充てられた分(プラス1.36%)が同率となり、薬価差財源の行方が不明瞭なまま決着した。
また、財務省の財政制度等審議会は11月にまとめた建議(意見書)で、薬価差財源を本体に充当せずに国庫に戻し、本体はマイナス改定とすることで、医療費抑制につなげるよう提言している。
これに自民党の厚労系議員は猛反発。8日に開かれた党の厚労部会では、「薬価差財源は元をたどれば国民が納めた保険料。(引下げで)余ったからと言って国庫に持ち去るのは“火事場泥棒”」(尾辻秀久元厚労相)、「薬価差財源を医療の充実に使うのは当然。二度までも財務省に騙されてはいけない」(武見敬三元厚労副大臣)など、財務省を牽制する声が多数上がった。医師でもある古川俊治厚労部会長は、出席した厚労省幹部らに「薬価差財源を本体に取り戻せるよう努力してほしい」と要請した。
翌9日には、党内最大規模の議員連盟「国民医療を守る議員の会」がプラス改定を求める決議を全会一致で採択。医療従事者の技術を評価するために薬価差財源を診療報酬本体の引上げに活用し、「ネットプラス改定」とするよう要望した。
この後、改定率を巡る論議は最終段階の大臣折衝を経て、年内にも決着する。

【記者の眼】横倉会長は菅官房長官、安倍首相と面会し、プラス改定を要望している。ただ、高村副総裁も厚労系議員も「今改定は非常に厳しい」と口を揃える。3年間で1.5兆円程度という社会保障費の伸びの「目安」を絶対視する財政サイドの圧力の強さが窺える。(F)

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top