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次期薬価制度改革で「特例再算定」導入 - 費用対効果は「良い悪い」評価せず [どうなる?診療報酬改定]

No.4783 (2015年12月26日発行) P.7

登録日: 2015-12-26

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次期薬価制度改革は、政府や財務省財政制度等審議会の建議が求める社会保障費抑制のカギを握る。
厚生労働省は16日の中央社会保険医療協議会薬価専門部会に骨子案を提示、大筋で了承された。柱となるのは、(1)新規後発医薬品の薬価を0.5掛けに引下げ、(2)長期収載品の特例的な引下げ(Z2)の対象となる置き換え率を引上げ、(3)市場拡大再算定に「特例再算定」を導入─だ。
(1)では現行の0.6掛けから0.5掛けに引き下げる。このうち注射薬については製薬業界が「乖離率が低い」として、「0.6掛けの継続」を求めていた。しかし、同日の会合で示された直近(15年9月)の薬価調査では、注射薬の乖離率は約28%と内用薬の18%と比べ高いことが明らかとなり、注射薬にも0.5掛けが適用される見込みとなった。注射薬の乖離率について、加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬)は「このデータを重く受け止め、日本ジェネリック製薬協会が事実に基づかない要望をしてきたことは専門委員として適切に対応するよう申し伝える」と述べた。
(2)では後発品医薬品の推進を加速するため、特例引下げの対象となる置き換え率を現行の60%未満から70%未満に引き上げる。(3)は「特例的」な高額医薬品への対応として、年間販売額が1000億円超で予想販売額の1.5倍以上に市場規模が拡大した場合、最大で25%を再算定時に引き下げる仕組み。1500億円超かつ予想販売額1.3倍以上の場合は最大で50%を引き下げる。

●「良い悪い」の基準値は18年度改定で
同日の中医協総会では、次期改定で試行導入される医薬品・医療機器などの費用対効果評価のあり方を巡る議論を取りまとめた。
試行導入では、制度のカギとなる費用対効果の「良い悪い」を評価する際の目安となる増分費用効果比(ICER)の基準値は定めないことになった。前回会合では、松原謙二委員(日医)が「患者ごとに『高い低い』の基準が異なることを理解する必要がある」と指摘。基準値を定めるには情報が不足しているとの意見があったことから、本格導入に向けて日本のデータに基づく支払意思額についての調査なども実施した上で、価格調整の具体的な方法の検討は18年度改定時に行う方針だ。

●湿布薬の処方70枚上限へ
中医協では個別事項の議論も進む。医薬品の適正給付を巡る議論では、湿布薬の処方が争点となった。
11日の総会で厚労省は、1回の処方で70枚を超える湿布薬が調剤されているケースが、全体の8.9%という調査結果を説明。これを踏まえ、1回の処方上限を70枚とし、レセプトでその湿布薬が何日分に相当するかの記載を要件化する案を提示した。
幸野庄司委員(健保連)は「本当に必要な数だけに制限すべき」として厚労省案を支持した。
一方、松本純一委員(日医)は「処方枚数には地域差がある。一律に規制するのはいかがなものか」と指摘。しかし、政府の規制改革実施計画が「市販品類似薬を含めた医療用医薬品の給付及び使用について、残薬削減等による保険給付の適正化の観点から次期診療報酬改定に向けて方策を検討し、結論を得る」としていることから、処方枚数の上限設定は避けられない状況だ。

【記者の眼】新規後発医薬品の薬価は原則先発品の0.5掛けとなった。業界は前回調査を踏まえ注射薬と外用薬の適用除外を求めていたが、注射薬については最新のデータでその論拠は崩れた。制度の過渡期における「データの鮮度」の重要性が浮き彫りになった。(T)

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