(概要) 厚労省は4日、4月に実施する診療報酬改定の関係告示を官報に掲載し、関係通知を全国に送付した。同省の説明を基に主な改定項目のポイントを解説する。
2016年度診療報酬改定の関係告示・通知が出された4日、厚生労働省は全国の地方厚生局に向けた改定説明会を開催した。以下、主な項目のポイントについて解説する。(関係告示・通知は弊社HP2016年度診療報酬改定関連資料から閲覧できます。)
●「継続的に診療を受けているもの」が対象
外来の柱として新設された「認知症地域包括診療料/加算」は「認知症以外に1以上の疾患を有する」患者が対象となる。その「疾患」の定義について厚労省は、「慢性疾患に限定はしないが継続的に診療を受けているもの」との考えを示した。同診療料/加算と同じ施設基準の地域包括診療料/加算のどちらを算定するかは各医療機関の判断になる。1人の患者について対象疾患が重ならない場合、違う医療機関が認知症地域包括診療料/加算と地域包括診療料/加算をそれぞれ算定することは可能だが、1つの医療機関での併算定はできない。
このほか新設の「小児かかりつけ診療料」について留意点が示された。同診療料の対象は、継続的に受診している原則3歳未満の患者だが、家族に対しかかりつけ医についての説明を行い、同意を得た上で書面への署名が必要となる。併せて他の医療機関で同様の説明を受けているかの確認も行う。
また、健診歴や予防接種歴の把握やスケジュール管理などの指導が算定要件となっているが、厚労省は母子手帳の提示を受けて確認し、必要な情報は診療録に記載して管理することを求めている。
●C項目の内科的治療は13種類
今回改定は14年度改定に引き続き、7対1病床の適正化に向けた要件厳格化が柱の1つに位置づけられている。その中心が重症度、医療・看護必要度の項目とその該当患者割合の基準見直しだ。
注目されていた一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」に新設されたC項目(手術等の医学的状況)の「救命等に係る内科的治療」の対象としてt-PA療法や経皮的心筋焼灼術など計13の治療が定義として示された(表1)。
病院にとって厳しいという意見が多いのが、原則「25%以上」、200床以下の場合は「23%以上」とされた重症患者割合だ。新基準設定に伴い7対1から10対1への移行が一定程度進むと想定されることから、移行を推進するため17年3月末までの1年間の経過措置として、7対1から10対1への変更に限り、病棟群単位での入院基本料の届出を可能にする。
ただし、病棟群単位の届出は1回に限定。4月1日時点で病棟群単位の届出をしたある病院が重症患者割合「25%以上」を満たすようになり全病棟7対1に移行した場合、再び7対1の施設基準を満たせなくなったとしても新たな病棟群単位の届出はできず、全病棟を10対1で届出する必要がある。
●単一建物診療患者人数の例外を提示
在宅医療では、在宅時医学総合管理料(在総管)、施設入居時等医学総合管理料(施設総管)について、新たな評価軸となる「単一建物診療患者の人数」の例外(表2)が示された。
在総管、施設総管はこれまでの「同一日」に着目した評価体系から、1カ月に単一建物で何人の患者の医学管理を行っているかという基準に見直しが行われる。単一建物診療患者人数は「1人」「2~9人」「10人以上」に3分類されるが、算出における例外として、(1)1つの患家に同居する同一世帯の患者が2人以上いる場合は患者ごとに「1人の場合」を算定、(2)在総管について、当該建築物で当該医療機関が在宅医学管理を行う人数が、戸数の10%以下の場合と戸数が20戸未満であって当該医療機関が在宅医学管理を行う人数が2人以下の場合にはそれぞれ「1人の場合」を算定─などの方針が示された。
一方、在宅患者訪問診療料についてはこれまで通り「同一日同一建物の場合」の基準が適用される。
●湿布薬の処方回数の制限はなし
調剤では、「1処方につき70枚」に処方制限される湿布薬について、同一月の処方回数の制限はないとされた。処方時は、処方箋と診療報酬明細書に投薬全量のほか、1日分の用量または何日分に相当するかを記載する必要がある。
このほか今改定では分割調剤が導入される。病状は安定しているが服薬管理の難しい患者に対し、30日を超える長期投薬を行う場合、処方医が分割指示に係る処方箋を交付する。薬局は長期保存が困難な場合や後発医薬品を初めて使用する場合も、医師が指示した場合には分割調剤を実施する必要があり、処方医には処方箋の備考欄に分割日数・分割回数の記載が求められる。
また、院内処方で後発品の使用割合が高い診療所の評価として新設される「外来後発医薬品使用体制加算」の施設基準について、厚労省は「薬剤師がいなくても、医師が基準を満たす業務を行っていれば届出は可能」とした。
【記者の眼】16年度診療報酬改定の具体的な取り扱いを眺めると、主に外来の医師や薬剤師に対し書面への記載を求める点数が増えた印象だ。急性期の勤務医の負担軽減は考慮された形だが、診療所の医師にはかかりつけ医として作業が増える方向に進んでいることが懸念される。(T)