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経済状況が語る次期改定率の行方 [お茶の水だより]

No.4742 (2015年03月14日発行) P.9

登録日: 2015-03-14

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▼中医協では次期診療報酬改定に向けた議論がスタートした。さらなる在宅医療の推進や7対1病床削減を柱とする病床機能の分化などを巡り、来年2月の答申まで白熱した議論が展開されることになるが、予算事項の改定率は例年年末には決定する。本欄では少し気が早いが、改定率の行方を占ってみたい。
▼2016年度改定の前哨戦ともいえる15年度介護報酬改定は9年ぶりのマイナス改定となる2.27%の引下げで決着した。主な要因は、政府が20年度に目指す国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB)の黒字化と消費税率引上げの延期だ。介護保険の総費用は00年の制度創設時の3兆6273億円から12年度には8兆7570億円に増大しており、予算では介護報酬を1%引き下げると260億円削減につながる。景気低迷で消費税率の引上げを延期した政府にとって、介護報酬を引き上げるという選択肢はなかったようだ。
▼この流れに追い打ちをかけるのは政府が夏までにまとめる「財政健全化計画」だ。内閣府による経済財政の中長期試算では、実質2%以上の高い成長を実現した場合でも20年度のPBは10兆円近い赤字で、黒字化は達成できない見通しとなっている。一方、麻生太郎財務相は2月に開かれた20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)でPBの政府目標実現に向けた計画の策定を表明。「国際公約」達成のため抜本的な歳出カットが打ち出されることは確実だ。
▼PBの黒字化には大別すると、(1)経済成長率の前提を高くする、(2)さらなる増税、(3)歳出削減─の3つの方策が考えられる。(1)は、14年の実質成長率がマイナス0.03%であることを踏まえると現行試算でも十分高い。(2)についても、昨年4月の増税後、政府の想定以上に経済指標が軒並み落ち込んだことから、現実的ではない。残された道は「歳出カット」だ。医療は11兆5000億円超の巨額予算を計上しているだけでなく、国民医療費の伸びはGDPの成長率を大幅に上回り続けている。今回引き下げられた介護報酬と同じ図式にあり、削減の柱となる可能性は高い。
▼各省庁の人事権を握る内閣人事局の創設や昨年末の衆院選の大勝により、官邸の力がさらに強まったとの見る向きは多い。改定率の最終交渉にあたる塩崎恭久厚労相は第一次安倍内閣の官房長官を務め、最近は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のガバナンスを巡り官邸との確執が報道されたものの首相に近い人物とされる。次期改定はどの角度から見ても医療界にとっては厳しいものとなりそうだ。

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