▼今般の熊本地震では、災害時医療支援システムが迅速に発動されたという印象を持つ。しかし、前震・本震に加え、続発する余震が医療支援活動に影響を与え、さらに被災者の方々のストレスを倍加させていることは想像に難くない。今後亜急性期に入り、様々な健康被害が発生する可能性がある。
▼そんな現地・現場での医療支援活動を正しく伝えることは報道機関としての責務ではある。しかし、それ以外にも何かお役に立てることはないか。そんな思いに駆られていた矢先、順天堂大循環器内科の代田浩之教授よりお電話をいただいた。「ハンドブックをネットに公開したい」
▼4年前、日本心臓病学会から、「東日本大震災の教訓を詰め込んだ『災害時医療ハンドブック』(写真)をまとめたい。医事新報で制作・販売できないか」とのお話があり、その編集のお手伝いをした記憶が蘇る。編集委員長の代田先生をはじめ、循環器領域の錚々たるメンバーが集い、多忙なスケジュールの合間を縫って繰り返された議論。その熱意にはまさに脱帽であった。
▼刊行の目処が立った頃、代田先生より「もし次に大規模な震災が起こった時は、現地ですぐにこのハンドブックが利用できるよう無償で公開してくれないか」との依頼を受けた。そして今回の震災─。
▼書籍の全文は学会の熊本地震特設サイトで即日公開された(http://www.jcc.gr.jp/info-gakkai/dinfo/kmedstaff.html)。微力ながらお役に立てたことを誇りに思う。そして、今後もあらゆる形で医療者に役立つ情報を伝え続けたいと心より思う。
▼言うまでもなく「現場取材」には意味がある。弊社としても、より充実した取材態勢を構築する予定である。ただし、医療支援活動を阻害したり、被災者への配慮を欠くような言動が万が一にもあってはならない。いのちの現場で、メディアはあくまでも謙虚であるべきだろう。