【Q】
電子カルテを利用していますが,耳鼻咽喉科領域の特殊検査や電子スコープで記録した動画の編集・解析ができず困っています。現在,電子カルテを使ってできる便利な機能,または今後できるようになる機能などがありましたら,信州大学・工 穣先生のご教示をお願いします。
【質問者】
新藤 晋:埼玉医科大学病院耳鼻咽喉科講師
【A】
ここ数年主流となっている大手企業の電子カルテは,そのほとんどが内科向けの文章記載中心型のカルテになっていて,画像や検査データをぱっと見せることは苦手としています。ましてや喉頭ファイバーで声帯の動きを動画で記録したり,めまい患者の眼振を動画で記録したりすることは,電子カルテ本体のサーバー容量圧迫への懸念から不可能とされている施設が多くみられます。
しかし,外科系の多くの診療科で内視鏡手術が主体となり,手術中の画像や動画が大量に記録されるようになったため,その記録を電子カルテ上でスムーズに閲覧したり,インフォームドコンセント用として利用したりすることが求められています。
ほとんどの病院では,放射線画像はPACS(picture archiving and communication system)と呼ばれる医療用画像管理システムで,消化管や気管支の内視鏡画像は内視鏡画像システムで,というように各部門のシステム上で画像や動画の管理を行っています。耳鼻咽喉科診療は電子スコープや硬性内視鏡による中耳,鼻咽腔,喉頭などの観察や,赤外線CCDフレンツェル眼鏡による眼振記録,聴力検査をはじめとする多種多様な自科検査があるため,これらの記録を一元管理できる部門システムの設置が必要です。
当科では,株式会社ファインデックス(旧ピーエスシー)のデータマネージメントシステムClaioを導入して外来,病棟,手術室で発生するすべての記録データ,画像,動画を一元管理し,常に電子カルテと連動させて運用しています(大学病院レベルで耳鼻咽喉科診療を完全電子化して部門システムで一元管理を可能にしたのは,おそらく当科が最初だと思われます)。
電子化を可能としたClaioの機能の1つに,自動眼振記録解析システムC-Nysがあります(図1)。これは眼振記録シート上で該当する体位の眼振記録を行うだけで,眼振の方向,強さ,水平・回旋の有無について自動解析して矢印表記までしてくれるものです(図2)。眼振動画が整理され,どの体位でどのような眼振が出ているか,また,それがどのように変化しているかを瞬時に理解することができるため,めまい診療がよりわかりやすいものになったと思います。
もう1つの便利な機能は「手術サマリー動画再生シート」です(図3)。手術中にポイントとなる動画を十数秒ずつ記録してためておき,術後に再生したい順番に貼りつければ,あっという間に手術サマリー動画ができます。カンファレンスや術後インフォームドコンセントにすぐに使用できるとともに,数年経ってもすぐに手術動画を見ることができるという良さがあります。