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舟状月状骨間靱帯損傷に対する治療【Garcia-Eliasの分類で治療法を選択するのがトレンド】

No.4786 (2016年01月16日発行) P.59

中村俊康 (国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/ 山王病院整形外科部長)

登録日: 2016-01-16

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

舟状月状骨間靱帯損傷は手関節外傷に合併することの多い疾患ですが,受傷時に見過ごされ陳旧例として受診することも少なくありません。様々な靱帯再建術や部分関節固定術の報告がありますが,一定の見解が得られていない印象があります。陳旧性動的舟状月状骨間解離に対する靱帯再建について,推奨される術式,舟状月状骨間の仮固定期間,後療法などについて,山王病院・中村俊康先生のご教示をお願いします。
【質問者】
平瀬雄一:四谷メディカルキューブ手の外科・ マイクロサージャリーセンター センター長

【A】

ご指摘の通り,舟状月状骨間靱帯損傷はX線で舟状月状骨間の開大(舟状月状骨間解離)がみられたとしても,新鮮例では疼痛があまりない場合もあり,また,合併する橈骨遠位端骨折にどうしても目が行くため,見逃されやすい手関節外傷です。治療法にも関節包固定術,靱帯再建術,関節固定術等があり,これまでは一定の見解が得られていませんでしたが,最近では新鮮損傷か陳旧性か,縫合可能か否か,整復可能か否か,変形性関節症の有無などでstagingするGarcia-Eliasの分類で治療法を選択するのが専門家の間のトレンドです。新鮮例であればpinning,縫合可能であれば縫合術,整復可能であれば腱制動術や靱帯再建術,変形性関節症がSLAC stage 2以上であればfour corner fusionなどの部分関節固定術を選択することになります。
さて,ご質問の陳旧性動的舟状月状骨間解離に対する靱帯再建術の場合には一次修復不可能であり,整復可能であることから骨─靱帯─骨(bone- ligament-bone:BLB)を他の部位から採取し,背側舟状月状骨間靱帯を再建する再建法と,橈側手根屈筋腱半裁腱を舟状骨に作成した骨トンネル内に通し,背側の舟状月状骨間上を通し,背側手根骨間靱帯にひっかけて,戻し,腱同士を縫合するthree-ligament tenodesis(3LT:腱制動術)の2つの手術法が行われています。
私自身は骨トンネルの開大が危惧される上,再建靱帯の舟状骨および月状骨への固定性に問題がある3LTよりも,再建靱帯を舟状骨および月状骨に強固にスクリュー固定できるBLBを好んで用いています。特に舟状月状骨間靱帯と生体工学的に同程度の強度を有する有頭有鉤骨間靱帯は採取も容易であり,関節軟骨を含むことで再建靱帯の骨化も防げることから優れた材料です。採取BLBと同じサイズの骨溝を舟状骨と月状骨に作成し,嵌め込み固定するため,手術の難易度はやや高いと思います。
舟状月状骨の整復を保持するために舟状骨─有頭骨間に1.2~1.5mmの鋼線を2本,舟状骨─月状骨間に同サイズの鋼線を1~2本挿入し,8週間ほど仮固定を行っています。抜釘を行った後,自動での手関節の掌背屈運動を2週間,他動での掌背屈運動を2週間行い,その後橈尺屈訓練を行いますが,他動での橈尺屈運動は再建靱帯の損傷を生じる可能性があるため,術後12週間程度経過した後に開始します。

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