このような題名の映画があるが、お気に入りではあるものの本稿と関連はない。
私は、糖尿病・内分泌の専門医として、今の病院で20年近く過ごしてきた。糖尿病という領域は、医師として実に厄介である。他人様(ひとさま)の食事や運動など、いわゆる生活習慣に口を出すという、お節介な役割を演じなければならない。
15年ほども前のある日、医療連携で親しく交流している診療所の先生から、足の血流が悪い、血糖も高い、という患者を緊急でお受けした。随時血糖300mg/dL超、HbA1c 11%超、右足は壊疽が進行する過程であり、入院して数日で写真のような状態となった。生活保護を受給し、健康診断は受けたことがない。肢切断の方針となり、数日以内に手術となった。患者も担当医もどーんと暗くなりがちなケースである。
ところが、この患者は、「先生のおかげで助けていただいて、ありがとうございました」と、いつ訪れても、穏やかな、曇りのない表情でおっしゃる。いつも見舞客が絶えず、近隣の方々から愛されるキャラのようだ。何か癒されオーラがある。聞くところによると、昔、知人の保証人になったか何かですっからかんになってしまったそうな。リハビリにも淡々と取り組み、数週間で転院されていった。
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