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予防接種時の微熱患者への対応

No.4708 (2014年07月19日発行) P.65

中山栄一 (レーヴこどもクリニック院長)

登録日: 2014-07-19

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

予防接種について,微熱があるときでも接種を控えることが多いが,本当に控えるべきなのか。その根拠など詳しく。 (千葉県 H)

【A】

予防接種法では,明らかな発熱を認める者や重篤な急性疾患に罹患している者などに関しては,接種対象外としている。「予防接種ガイドライン2013年度版」(文献1)においても,ほぼ同様のことが示されている。明らかな発熱とは,通常37.5℃以上を指しているが,乳幼児においては気候や環境の違い,授乳後などで容易に37.5~38℃程度の体温上昇を認めることがある。そのため急性疾患に罹患している際は,発熱の有無に関係なく,診察,全身状態を加味して重症度を判定し,ワクチンを接種するか延期するかを決定する必要がある。仮に,発熱を認めた上で接種した場合でも,副反応が増強することはない。American Academy of Pediatrics発行のRed Bookでは,発熱自体が予防接種の禁忌とはならず,むしろ積極的接種を勧奨している(文献2)。
安全性を重要視するのは当然のことではあるが,わが国ではそれを重要視しすぎるあまり,予防接種の本来の目的であるワクチン予防可能疾患(vaccine preventable disease:VPD)から子ども自身を守る機会が失われている部分がある。軽微な感染症などで接種時期を逃し,VPDの細菌,ウイルスに曝露された結果として起こる疾患への罹患やその合併症のリスクと,ごく稀に発生する予期せぬ副反応のリスクでは,発生頻度だけでなく生死や,合併症などによる長期的予後などを考えると,比較に値しえないと思われる。例外として,麻疹,水痘などの細胞性免疫が低下するような疾患を罹患した際は,微熱の状態であったとしても個人の免疫の観点から回復を待つ必要がある。
軽微な感冒では,診察した上で可能な限り接種を促し,38℃以上の明らかな急性疾患では,回復後速やかにワクチン接種を受けるように指導を行う必要がある。予防接種ガイドラインに,明らかな発熱時に接種を延期するように明記されているのは,ワクチン接種後に原疾患が悪化した際,ワクチン接種が原因と勘違いすることや,原疾患による症状をワクチンの副反応と勘違いすることを避ける目的もある。

【文献】


1) 予防接種ガイドライン等検討委員会:予防接種ガイドライン. 2013年度版. 予防接種リサーチセンター, 2013, p17-8.
2) Larry KP, et al:Red Book. 29th ed. American Academy of pediatrics, 2012, p45-50.

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