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いびきと睡眠関連うなり(カタスレニア)の違い

No.4743 (2015年03月21日発行) P.64

河野正己 (日本歯科大学新潟病院睡眠歯科センター長/口腔外科教授)

登録日: 2015-03-21

最終更新日: 2018-11-27

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【Q】

いびきと睡眠関連うなり(カタスレニア)は何が違うのか。鑑別方法について。(新潟県 S)

【A】

カタスレニアはギリシャ語のカタ(=ようなもの)とスレニア(=うめき)の合成語であり,邦訳は「睡眠関連うなり」という。睡眠中の呼気時にうなり声によく似た音声を発する睡眠呼吸障害である。
睡眠障害国際分類第2版(ICSD-2)では,睡眠時遊行症(夢遊病)やレム睡眠行動障害などと同じ睡眠時随伴症に分類されている。ベッドパートナーによっては,かん高い声,しゃがれ声,大きくうなるような声,大きく吠えるような声,と様々に報告されることがあるが,レム睡眠行動障害のような夢に応じた異常な行動や寝言とは明らかに異なる(文献1)。
睡眠ポリグラフからみたカタスレニアの特徴は,入眠して2~6時間でうめき声(うなり声)が始まって,短いものは数秒,長いものは数十秒にわたり持続し,睡眠中に何度も繰り返し観察されることである。うめき声に伴って,心拍数と体血圧がわずかに減少し,その終了で反跳(増加)する。また,脳波上の覚醒も観察されている(文献1)。
一方,いびきは音声ではなく,咽頭周囲の軟部組織の振動音である。吸気時に生じ,時に往復いびきの場合もあるが,呼気時だけのものはない。
この,いびきとカタスレニアが同じエポックに現れた睡眠ポリグラフを示す(図1)。先行するいびきは吸気時に生じ,嚥下運動とそれに伴う微小覚醒を経て,延長した呼気時にカタスレニアが観察される。ICSD-2では,カタスレニアは主にレム睡眠中に生じ,ノンレム睡眠中にはほとんど生じないとされているが,この図のようにノンレム睡眠中に生じることは稀ではない(文献2)。
カタスレニアには睡眠時無呼吸症候群が合併していることもあるため(文献3),いびきや睡眠呼吸障害の亜系と考えられることもある。
カタスレニアの治療にCPAP装置や口腔装置(oral appliance)を用いると,CPAP装置は奏効するが口腔装置は必ずしも奏効しない(文献3)。多系統萎縮症による喉頭喘鳴,すなわち喉頭内の狭窄にも効果のあるCPAP装置に対し,口腔装置の効果は下咽頭までが限界である。
カタスレニアの発生源に関する報告は確認できなかったが,CPAP装置と口腔装置の効果の差こそ,喉頭内に発生源が存在するという証左かもしれない。

【文献】


1) 米国睡眠医学会:睡眠障害国際分類. 第2版. 日本睡眠学会診断分類委員会, 訳. 医学書院, 2010, p171-3.
2) Abbasi AA, et al:Sleep Breath. 2012;16(2): 367-73.
3) Guilleminault C, et al:Sleep. 2008;31(1):132-9.

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