株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

肺炎球菌ワクチンの副反応として血小板減少が起こる頻度

No.4749 (2015年05月02日発行) P.61

川上和義 (東北大学大学院医学系研究科保健学専攻感染分子病態解析学分野教授)

登録日: 2015-05-02

最終更新日: 2016-10-18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

【Q】

肺炎球菌ワクチンの添付文書に,重大な副反応として血小板減少が明記されています。そこで,実際の血小板減少の発生頻度と機序について知りたいと思います。もともと血小板が少ない人は,さらに減少する可能性が高いのでしょうか。特に高齢者におけるリスクについて,ご教示下さい。 (福岡県 T)

【A】

現在使用可能な肺炎球菌ワクチンには,23価莢膜多糖体ワクチン(ニューモバックスNP)と13価コンジュゲートワクチン(プレベナー13)があります。前者は2014年10月から高齢者を対象にB類疾病として定期接種化され,後者は2014年6月から高齢者への適応拡大が実施されました。いずれの添付文書にも,重大な副反応として血小板減少が記載されています。ニューモバックスNPは脾摘患者にも適応があり,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)のため脾摘が行われた患者に接種されることも多くあります。海外で,小康期にあるITP患者にニューモバックス(現行のワクチンとはウシ由来成分使用の点で製法が異なり,14価であった)を接種したところ,血小板減少の再燃がみられたとの報告があります(文献1,2)。以下,症例の概要です。
症例1:17歳,男性。脾摘4日後にニューモバックスを接種したところ,18万1000/μLであった血小板数が2日後に8万4000/μL,6日後に2万9000/μLに低下。
症例2:48歳,女性。脾摘後にニューモバックスを接種したところ,14万/μLだった血小板数が10日後に5000/μL以下になり,鼻出血と全身性の紫斑が出現。
症例3:38歳,男性。ニューモバックスを接種したところ,2週間後に突然の鼻出血と紫斑が出現し,血小板数も3万2000/μLに低下。
ITPは,血小板膜糖蛋白に対する自己抗体が出現し血小板に結合する結果,脾臓など網内系での血小板の破壊が亢進する疾患です。肺炎球菌ワクチンが非特異的にB細胞を活性化し抗血小板抗体の産生を促進させたとする説や,麻疹ワクチンで報告されているように骨髄の巨核球を抑制するとの説(文献1,2) もありますが,詳細な機序は不明です。添付文書にもあるように,ニューモバックスNPによる血小板減少の正確な発生頻度は明らかではありません。
一方,プレベナー13の接種に伴う血小板減少は,因果関係は不明ながら小児での報告があります。しかし,自発報告のため実際の頻度は不明です。高齢者では,接種開始からの期間が短く,接種症例数が少ないものの,現時点では報告がありません。上記の3症例の報告のように,もともと血小板減少があれば注意深い経過観察が必要です。高齢者におけるリスクはデータがないため回答できませんが,もし鼻出血や歯肉出血,点状出血,紫斑などの症状が出たら受診してもらうなどの説明をしておくことが望ましいと思われます。

【文献】


1) Citron ML, et al:JAMA. 1982;248(10):1178.
2) Kelton JG:JAMA. 1981;245(4):369-71.

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top