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Ki-67とは

No.4754 (2015年06月06日発行) P.62

森谷卓也 (川崎医科大学病理学2教授)

登録日: 2015-06-06

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

腫瘍の悪性度を示すKi-67とは何か,ご教示下さい。 (東京都 F)

【A】

Ki-67は,10番染色体長腕に存在する遺伝子により発現する蛋白質です。これは細胞周期に関連する分子の1つで,休止期(G0)を除くすべての細胞核に発現するため,細胞増殖マーカーとして利用されています。
Ki-67の発現は,病理組織切片において免疫組織染色により検索します。陽性細胞はその核に発現が認められ,一定の腫瘍細胞中の陽性細胞の比率をKi-67ラベリングインデックス(LI)として表します。増殖の指標として核分裂像をカウントする方法もあります。核分裂像数は強拡大視野中など単位面積中の実数として示されるのに対して,Ki-67LIは一定の腫瘍細胞中の陽性細胞の比率として示される点が異なります。
腫瘍細胞におけるKi-67発現の多寡は,その腫瘍が発育する速度に関与しており,Ki-67LIが高い症例ほど増殖が速くなります。また,一般には増殖が速い腫瘍(がん)ほど悪性度が高くなります。現在,神経内分泌腫瘍,乳癌,悪性リンパ腫,脳腫瘍,肉腫などで,日常的に染色が実施されています。
たとえば,神経内分泌腫瘍ではグレード分類の指標の1つとして,乳癌ではホルモン受容体陽性,HER2(human epidermal growth factor receptor type2)陰性症例における化学療法の適応決定の指標として,ほかにも再発予測因子などとして用いられています。
Ki-67を染色するための抗血清は複数ありますが,MIB-1に対するモノクローナル抗体が最も頻用されているため,この抗体とほぼ同義として記載されることがあります。しかし,染色方法や評価法(どの細胞を陽性とするか,どのようにカウントするかなどの方法)については,いずれも手順が定まっていないのが実情です。
特に,治療方針に直結する乳癌の領域では注目度が高く,現在,国際共同研究ならびに日本の学会研究班などで,標準化への試みがなされています。

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