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沖縄における夏季のインフルエンザ流行とその理由

No.4764 (2015年08月15日発行) P.63

押谷 仁 (東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授)

登録日: 2015-08-15

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

熱帯・亜熱帯地域におけるインフルエンザ流行に特徴はありますか。インフルエンザは沖縄で1年中認められると聞きますが本当ですか。もしそうであれば,その理由はどのようなものですか。 (東京都 S)

【A】

インフルエンザは,温帯地域では冬を中心にして毎年のように流行し,主に乳幼児や高齢者に入院・死亡などの疾病負荷をもたらしていることがよく知られています。
かつては,熱帯・亜熱帯地域ではインフルエンザは公衆衛生上の大きな問題ではないと考えられていたこともありますが,熱帯・亜熱帯地域を含む世界各地でインフルエンザサーベイランスが行われるようになり,温帯地域と同程度の疾病負荷があることがわかってきています(文献1)。
それとともに熱帯・亜熱帯地域では温帯地域と違って,年間を通してインフルエンザウイルスの活動がみられることもわかってきています(文献2)。
亜熱帯地域に位置する沖縄では,インフルエンザ流行のパターンが,本州や九州などのそれ以外の地域と若干異なります。最も顕著なピークは,ほかの地域でもインフルエンザの流行が起きる1~2月にみられることが多いのですが,これ以外の月にもインフルエンザの活動はみられ,初夏や夏にもう1つのピークを認めることがあります(文献3)。
沖縄を含む熱帯・亜熱帯地域では,なぜ年間を通してインフルエンザが伝播しているのかについてはよくわかっていません。そもそも,なぜ温帯地域で冬に流行するのかについても,温度・湿度がインフルエンザの伝播に関連するなど様々な要因が考えられていますが(文献4),正確にわかっているわけではありません。
沖縄で初夏や夏のインフルエンザ流行が注目されるようになってきた背景には,迅速診断キットが広く使われるようになり,これまでわからなかった季節外れの流行が検知されるようになったことが影響していると考えられます。
沖縄以外の地域でも小規模な地域内流行は,夏を含むインフルエンザの非流行期にもみられています。インフルエンザの流行期ではなくても,インフルエンザ様疾患の患者の集積を認めた場合にはインフルエンザウイルス感染を疑う必要があります。

【文献】


1) Wong CM, et al:Clin Infect Dis. 2004;39(11):1611-7.
2) Otomaru H, et al:PLoS One. 2015;10(4):e0123755.
3) 沖縄県感染症情報センター. [http://www.idsc-okinawa.jp/]
4) Tamerius J, et al:Environ Health Perspect. 2011;119(4):439-45.

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