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膝関節を捻った場合の鑑別診断は?【前十字靱帯損傷,半月板損傷,膝蓋骨脱臼,高齢女性では特発性大腿骨内顆骨壊死も考慮】

No.4780 (2015年12月05日発行) P.65

石橋恭之 (弘前大学大学院医学研究科整形外科学講座 教授)

登録日: 2015-12-05

最終更新日: 2016-12-14

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【Q】

膝関節を捻った後の痛みに関する疾患の鑑別診断をご教示下さい。 (岩手県 O)

【A】

膝関節を捻った場合,詳細に診察すると,関節裂隙,もしくはやや近位部に痛みが生じることのほうが多いと思います。もし膝関節より遠位部に痛みがあるとすると,内側側副靱帯の脛骨側での断裂が考えられます(図1)。ただし,この損傷形態は比較的稀であり,かつほかの靱帯損傷(前十字靱帯損傷など)に伴って生じることがほとんどです。膝関節を捻って生じるわけではありませんが,膝下部痛であれば,腓腹筋内側頭の肉離れなども考えられます。中高年に多く,テニスレッグとも呼ばれています。
スポーツ活動時に膝関節を捻って生じる疾患としては,前十字靱帯損傷と半月板損傷が挙げられます。前者はスポーツで生じる膝関節血症の約70%を占めるとされています。頻度の高い外傷で,ジャンプの着地やストップ動作時に多く生じます。受傷時,脛骨外側部が大腿骨外側顆に対し前方にずれるため,外側関節裂隙にしばしば圧痛を認めます。前十字靱帯損傷に内側側副靱帯損傷を合併した場合には,膝内側部に疼痛を認めます。半月板損傷は,荷重した状態で膝関節を捻った場合などに生じ,内側あるいは外側関節裂隙に圧痛を認めます。
下腿を捻って痛みを再現する半月板徴候テスト(McMurrayテストやApleyテストなど)が診断に有用です。前十字靱帯損傷も半月板損傷も,確定診断にはMRIが必要です。
また,膝蓋骨脱臼や亜脱臼も鑑別疾患に挙げられます。膝蓋骨は外側に脱臼するため,膝蓋骨を制動している内側膝蓋大腿靱帯が損傷され,同部に圧痛が生じます。内側膝蓋大腿靱帯と内側側副靱帯の大腿骨付着部は近接しているため,内側側副靱帯損傷と誤診されることもあります。
中高齢者が膝関節を捻ってから痛みが生じた場合も,半月板損傷が疑われます。基盤として,半月板の退行変性を伴うため,若年者と異なり比較的軽微な外力によっても生じます。変形性膝関節症を伴うことも多く,内側関節裂隙に圧痛を認めます。また,中高齢者,特に女性では,特発性大腿骨内顆骨壊死も考えられます。本疾患は,骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折が原因の1つと考えられています。変形性膝関節症と異なり,夜間痛を認めることが特徴的です。大腿骨内顆骨壊死の初期X線で通常所見を認めないため,早期診断にはMRIが有用です。


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