【Q】
1)2期の接種時期(11歳過ぎ)になって,DPTの追加接種が未接種であったことに気づく事例があります。その場合,任意接種で以下のうちどうすべきですか。
ア. 初回3回の接種はしているため基礎免疫はあると考え,追加接種はせず,2期DT接種とする。
イ. DPT追加の代わりにDTを2回接種する(1回は任意。その場合,2回目の間隔はどれくらいあけるべきか)。
ウ. DPT追加の代わりにDPT-IPVを任意で接種し,その後,2期DT接種とする(その場合,2期との間隔はどれくらいあけるべきか)。
(2)DPTを思春期以降に接種する場合(任意),0.2mLに減らして接種する方法がありますが,上記のように4回接種(規定回数)に満たない場合は0.5mLでよいのでしょうか。0.2mLに減らすのは,4回以上の接種の場合との理解でよいですか。 (東京都 K)
【A】
[1]2期になりDPT追加接種をしていなかったことがわかった場合
DPTワクチンの場合,1期で合計3回の接種を受けていれば基礎免疫があると考えますので,DPTの追加接種はしないで,2期にDT接種を行います(文献1) 。選択肢アに該当します。
[2]4回接種に満たない思春期以降の接種量
百日咳,破傷風,ジフテリアのうち,どれを重視するかにより対応が違ってきます。
(1)百日咳に対する予防
欧米では,乳児の百日咳の感染源となっている成人の百日咳を減らすために,DPTワクチンの破傷風抗原量はそのままにして,ジフテリアと百日咳の抗原量を減らしたTdapというワクチンが製造されており,DPT接種歴がはっきりとしない成人に対してもTdapの接種を積極的に勧めています(文献2)。
Tdapに含まれる百日咳抗原量は,DPTワクチン0.2mLと同じ量になります。わが国で思春期以降にDPTワクチン0.2mLを接種した場合,DPTワクチンの接種歴を問わず,百日咳の感染防御に十分な抗体価を獲得できるという報告があります(文献3,4)。ただし,現在ではDPTワクチンの製造が中止されていますので,今後はDPTワクチンの入手が困難になることが予想されます。この場合,不活化ポリオワクチンを含むDPT-IPVで代用せざるをえないわけですが,DPT-IPVを用いた同様の検討は行われていないのが現状です。わが国にもTdapの導入が望まれるところです。
(2)破傷風に対する予防
1期で合計3回以上のDPTワクチン接種を受けていれば,基礎免疫はできていると考えられます。この場合にはDTトキソイドを0.1mL接種することで,感染防御に必要な抗体価を獲得することができます。1期に未接種,あるいは1~2回しかDPTワクチン接種を受けていない場合には,破傷風トキソイド0.5mLを3回接種することで基礎免疫をつける必要があります。DTトキソイドを用いることもできますが,0.5mLとするとジフテリアトキソイドに対する局所反応が強く出る可能性があります。DTトキソイドの接種を行う場合には局所反応を観察して,反応が強ければ以後減量することも必要になります(文献1)。
(3)ジフテリアに対する予防
わが国では過去10年以上ジフテリアの発生がありませんので,ジフテリアトキソイドの単独接種の需要は高くないと思われます。基礎免疫に対する考え方,DTトキソイドを接種する際の注意点は破傷風の場合と同じです(文献1)。
1) 木村三生夫, 他:予防接種の手びき〈第14版〉. 近代出版, 2014.
2) Kretsinger K:MMWR Recomm Rep. 2006;55(No. RR-17):1-33.
3) 岡田賢司:小児臨. 2001;54(8):1599-606.
4) 伊東宏明, 他:日小児会誌. 2010;114(3):485-91.