「更年期(障害)だと思うんですが……」と婦人科を受診する患者は多い。不定愁訴の代表的な疾患とされ、原因が明確でない患者の訴えには更年期障害として対処しがちである。患者が40~50代であればなおさらである。40歳のAさんもその1人だった。パート勤務で夫と2人暮らし。身長168cm、体重60kg。細面で、実際の体重よりやせてみえる。顔色不良で表情も乏しく、言葉にも力がない。20歳の時に子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢腫)の手術で卵巣の一部は残せたものの、33歳の時に更年期障害と診断されていた。その後、他院でホルモン補充療法(HRT)や漢方療法を受けていたが、最近、頭痛や肩こり、めまいに嘔気、さらには声も出せないほどの強い疲労感といった様々な症状が表れたため当院を受診したという。
はじめは更年期障害(卵巣機能欠落症状)と職場のストレスによる抑うつ状態と考え、HRTに加えてSSRIや抗不安薬の投与を開始した。しかし、来院ごとに激しく変化する患者の様子に、しだいに違和感を覚えるようになった。いつも通り無表情のままのこともあれば、派手な服装で現れ、満面の笑みで「もう、すっかりよくなりました!」と言ってくることもあった。また、生育歴にも問題を抱えている様子であり、双極性障害や統合失調症も疑われたため精神科へ紹介したところ「神経症性うつ状態」と診断され、投薬も受けたが「症状が変わらない」という患者の意思で治療は中断され、再び当院で診療することとなった。
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