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甲状腺乳頭癌頸部リンパ節再発への対応

No.4739 (2015年02月21日発行) P.59

吉田 明 (神奈川県立がんセンター乳腺・内分泌外科部長)

登録日: 2015-02-21

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

甲状腺乳頭癌は手術後の生命予後は良好ですが,術後の経過観察において,頸部リンパ節再発症例がたびたび経験されます。もちろん,その進行が遅いことから,いったん発見されたリンパ節腫大に対し,その時点で大きな問題がなければ細胞診をせず,そのまま様子を観察するケースもあるとは思います。しかし,一方で担癌状態の可能性があることへのストレスを感じ,診断および治療を求める患者さんが多いというのも事実です。また,再発を繰り返すため,その手術タイミングの決定に頭を悩ますことも多々あります。
神奈川県立がんセンター・吉田 明先生は,甲状腺乳頭癌の術後頸部リンパ節再発症例に,どのように対処しておられるでしょうか。
【質問者】
日比八束:藤田保健衛生大学医学部内分泌外科准教授

【A】

甲状腺乳頭癌の再発部位として頸部リンパ節は最も頻度の高いもので,その取り扱いに苦慮する場合も稀ではありません。私たちの施設では甲状腺乳頭癌術後のリンパ節腫大に対しては,甲状腺微小癌の取り扱いに準じた対処を行っています。
すなわち,0.5cm以下のリンパ節腫大は,たとえ癌の再発が疑われても原則として経過観察をしております。一方,1cm以上のリンパ節腫大で超音波上再発を疑わせるようなものには細胞診を行い,癌の診断がつけば,再手術を行うようにしています。
頸部リンパ節再発症例の予後を長期間観察すると,初回手術時の年齢が45歳未満である場合,1~2回の再手術で完治したと考えられるものがほとんどです。しかし,45歳以上では再手術を行っても治りにくいものが年齢とともに増加し,再発を繰り返しているうちに切除不能となる例や,肺転移を伴ってくる例が少なからず存在します。0.5~1cmの再発を疑わせるリンパ節腫大については,前述のように,年齢による予後の差を考慮に入れて手術適応を決めているのが現状です。
術後の頸部リンパ節再発を手術する場合,原則として6カ月以内を目標にしていますが,術前に遠隔転移の有無や残存甲状腺の有無および病変をチェックするようにしています。

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