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小児甲状腺癌の治療

No.4984 (2019年11月02日発行) P.47

杉野公則 (伊藤病院外科・副院長)

登録日: 2019-11-03

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【小児甲状腺癌と成人甲状腺癌では,治療方針は異なるのか?】

甲状腺癌の多くは成人に発症するため,小児期の甲状腺癌はきわめて少ない。甲状腺専門病院である当院においてもきわめて少なく,2003~16年に当院で初回手術を行った甲状腺癌1万2599例のうち,20歳以下は1.2%,さらに15歳以下では,わずか0.3%を占めるにすぎなかった。

発生が稀ということもあり,その臨床的な特性は明らかでないことが多い。甲状腺分化癌の予後に年齢が重要であることは古くから知られており,TNM分類においても年齢により病期分類は大きく異なる1)。55歳以下では,遠隔転移があってもステージは2にとどまる。

一般的に,甲状腺分化癌の予後は良好であり,米国甲状腺学会(ATA)が示している成人の甲状腺癌に対するガイドライン2)では,非進行例においては甲状腺片葉切除術が許容されているが,同じATAが示している小児甲状腺癌のガイドライン3)では,基本的に甲状腺全摘を全例に勧めている。

小児甲状腺癌は初診時より遠隔転移やリンパ節転移を認める進行例が多く,再発率は高い。しかし,治療にはよく反応し,生命予後は良好である。進行例ではともかく,非進行例では成人と同様に保存的な治療が許容されるのか,明らかな方針は示されていない。今後は既存の病期に関わる臨床病理学的因子に加え,個々の症例の遺伝子プロファイルも考慮した治療方針が求められてくる。

【文献】

1) Brierley JD, et al, ed:TNM Classification of Malignant Tumours. 8th ed. Wiley-Blackwell, 2017.

2) Haugen BR, et al:Thyroid. 2016;26(1):1-133.

3) Francis GL, et al:Thyroid. 2015;25(7):716-59.

【解説】

杉野公則 伊藤病院外科・副院長

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