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甲状腺癌に対する分子標的薬治療の副作用の管理

No.4978 (2019年09月21日発行) P.52

正木千恵 (伊藤病院外科)

登録日: 2019-09-21

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【緻密な尿蛋白評価と適切なマネジメントを要する】

根治切除不能な甲状腺癌に対し2014年以降に分子標的薬が承認され,これまで治療手段に限界のあった進行症例に対し,新たな希望をもたらした。現在,わが国ではmulti kinase inhibitorであるソラフェニブ,レンバチニブ,バンデタニブの3剤が使用可能である。これらは薬剤ごとに標的分子に差異があり,抗腫瘍効果を現すと同時に特徴的な副作用も併発しえ,出現頻度はほぼ100%である。代表的なものとして,VEGFR-2の抑制による蛋白尿,VEGFR,PDGFR,c-KIT,FLT3への作用による手足症候群などが挙げられる。

VEGFは腎糸球体のポドサイトに多く発現されており,腎機能にきわめて重要な役割を担っているため,血管新生を抑制する薬剤の投与により,ポドサイトがダメージを受けることで蛋白尿が出現する。薬剤投与時には緻密な尿蛋白評価と適切なマネジメントを要する。蛋白尿の評価法は各種ガイドラインにおいて随時尿の尿蛋白クレアチニン比の有用性が示されている1)

VEGFRに作用する薬剤は皮膚関連有害事象も多くみられ,手足症候群のほかに紅斑,脱毛症などが報告されている。予防のための患者教育は重要であり,主に皮膚保湿,荷重部位の除圧,爪の管理,紫外線予防,禁煙などが推奨されている1)

これらの副作用に対応するためのチーム医療が求められる。

【文献】

1) Capdevila J, et al:Cancer Treat Rev. 2018;69: 164-76.

【解説】

正木千恵 伊藤病院外科

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