【現状,確実に軽快させる治療はなく,手術時は患者への十分な説明が必要である】
頸部違和感の原因は様々であり,局所的原因を除外するため頸部エコー検査等の諸検査がなされる。その際に甲状腺疾患が見つかることも多いが,主訴が本当に甲状腺疾患に起因するか判定に迷うことがある。また,甲状腺疾患を有する患者の頸部違和感を軽快させる治療として,甲状腺切除術が提案されてきたが,本当に頸部違和感が改善するのかは議論の分かれるところであった。
伊藤病院における2016年2~7月の前向き研究〔アンケート調査:616人(甲状腺癌365人,甲状腺良性腫瘍169人,バセドウ病82人)〕によると,術前の頸部違和感は,バセドウ病およびうつ傾向を示すSDS(self-rating depression scale)が高い患者において有意に高い結果(P<0.05)であった。甲状腺重量別の検討では,頸部違和感の頻度や強さに差を認めなかった。
頸部違和感の頻度は,術前29.4%,術後2日目75.3%,術後1カ月目78.9%であり,その後減少し術後3カ月目で55.8%であったが,1年経過した時点においても49.3%の患者が違和感を自覚していた。術前無症状であった患者(435人)の33.8%は有症状となり,術前軽症群(154人)の患者の16.9%は重症群へと悪化していた。一方,術前に強い有症状の患者(27人)中35%は,頸部違和感が軽快したと回答していた。術後の頸部違和感悪化の影響因子としては,頸部外側リンパ節郭清施行群および術前のSDSの高いことが有意であった。手術時には,甲状腺手術後の頸部違和感について患者に説明が必要であると思われた。
【参考】
▶ Tomoda C, et al:Thyroid. 2018;28(1):104-9.
【解説】
友田智哲 伊藤病院外科・耳鼻科