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甲状腺手術における新しいデバイス:IONM(術中神経モニタリング)

No.4944 (2019年01月26日発行) P.52

友田智哲 (伊藤病院外科・耳鼻科)

登録日: 2019-01-26

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【客観的な神経の同定,機能評価が可能】

手術を施行する際には,致死的な合併症を避けるとともに,患者のQOLに配慮した安全な手術を施行することが求められる。甲状腺術後の患者QOLに影響を与える因子として,術中の反回神経や上喉頭神経外枝損傷が挙げられる。これらの神経障害によって声の変化や嚥下障害が生じ,患者は日常生活に不自由を感じる。神経走行は様々であり,肉眼的同定が困難な場合や,肉眼的に正常に見える神経でも,牽引などが原因で麻痺を起こしている場合がある。

客観的な神経の同定,機能評価が可能である電極付き挿管チューブを使用した術中神経モニタリング(IONM)が現在多くの施設で導入されている。2014年に甲状腺癌,18年にバセドウ病手術時におけるIONM使用が保険収載された。16年からはAPSTM電極を使用した持続神経モニタリングも可能となった。

持続神経モニタリングでは術操作中,連続的に神経を刺激することができるため,神経への影響をその場で判断することが可能である。術者は術中,どのような操作が神経に影響を及ぼすのか身をもって知ることができ,自分自身の手術手技を見直すことができる。また,術中の牽引などによる神経障害などでは,神経のダメージが軽度のうちに操作を中断すると,神経機能は速やかに改善することもわかってきた。これによって,術後の一過性および永続性神経麻痺の頻度が減少したと報告されている。

【参考】

▶ Schneider R, et al:Br J Surg. 2015;102(11): 1380-7.

【解説】

友田智哲 伊藤病院外科・耳鼻科

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