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浅田宗伯(1)[連載小説「群星光芒」238]

No.4826 (2016年10月22日発行) P.64

篠田達明

登録日: 2016-10-21

最終更新日: 2016-10-24

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  • 生まれて間もない明宮は籐製の寝台の中で喘いでいた。
    全身にびっしりと紅斑がひろがり、時折もらす泣き声はか細い。いまにも息が絶えそうな重篤さに、わしは脇の下から冷や汗がしたたり落ちるのを覚えた。

    ――もし治療に失敗したら切腹してお詫びするほかない……。

    わしは家を出るとき、そう覚悟して手文庫にあった短刀を薬箱の中に忍ばせてきた。
    明治天皇の第3皇子明宮嘉仁親王が東京青山の皇子御殿で生誕されたのは明治12(1879)年8月31日、午前8時12分だった。
    だが、まもなく明宮は全身の発疹と嘔吐を発し、白目をむいてひきつけを起こした。ひきつけは何度も繰り返し生じ、切迫した状態となった。
    緊急の呼び出しを受けたわしは、身を清め、無垢の白装束に黒頭巾を被り、牛込横寺町の自宅から往診駕籠に乗って皇子御殿の御産所に駆けつけた。

    残り1,981文字あります

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