スティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)の診断は病像が完成されれば比較的容易であるが,発症早期には水痘,単純性疱疹,麻疹,風疹などのウイルス感染症と誤診され,見逃されることがあり,注意が必要である
SJS/TENの診断は,改訂された診断基準2016に基づき,副所見を十分考慮の上,主要所見をすべて満たすことによる
発症早期に広範囲に及ぶ多形紅斑様皮疹に発熱または粘膜症状のいずれかを伴う場合は,常にSJS/TENの可能性を念頭に置き,1回の評価により診断を決めつけず,経過中も繰り返し鑑別診断を行うことが,見逃しの防止に有効と考えられる
SJS(Stevens-Johnson syndrome)は,1922年に米国の小児科医StevensとJohnson1)が口内炎と眼病変を伴う新しい熱性発疹症として2小児例を報告したことに始まる。これに対しTEN(toxic epidermal necrolysis)は,1956年に英国の皮膚科医Lyell2)により,発熱を伴って急速に発症し,重症熱傷に似る水疱・びらんを呈し組織学的に表皮の壊死融解を特徴とする疾患として報告された。
このように,両疾患は異なる領域から報告され,長年,別疾患として扱われてきたが,表皮細胞の壊死性変化を本態とする同様の病態を呈する。TENの90%以上の症例は,小型の紅斑の融合からなるTEN with spots/maculeであり,SJS進展型TENとも表現される。このため近年では,SJSとTENは連続性の疾患と考えられるようになり,1993年の国際研究グループによれば,表皮剝離面積10%未満はSJS,10~30%未満はSJS/TEN overlap,30%以上はTENと分類されている3)。わが国ではSJS/TEN overlapを含め,10%以上はTENとして取り扱っている4)。
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