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浅田宗伯(2)[連載小説「群星光芒」239]

No.4827 (2016年10月29日発行) P.72

篠田達明

登録日: 2016-10-30

最終更新日: 2016-10-25

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  • 皇子世話役の中山忠能卿は明宮の容態を懸念するあまり皇室に奏上した。

    「宮の今後のこと、甚だ恐懼に堪えざり難く存じ上げます」

    御上(天皇)と皇太后、皇后も深く軫憂なさり、日々皇子御殿に使いを出して容態を訊ねられた。
    10月末まで明宮の病状は落ち着いていたが、11月に入ると5日と26日にそれぞれ6、7回ずつ痙れんが生じた。
    尚薬(宮中侍医)のわしは胎毒によるものと判断して「妙功十一丸」により発作を攻め下した。12月になると病勢はすこぶる平静となり、痙れんも12月9日に1回生じただけだった。

    「宮様はご安泰になられました」

    わしが中山卿にそう申し上げると蒼ざめた表情は一変して笑顔が浮かんだ。
    大晦日まで皇子御殿で宿直を勤めたわしは元旦に家に帰り、万一のときにと薬箱に忍ばせた短刀を手文庫に戻した。
    のちにわしは宮中より慰労金1000円と絹布4疋を賜り、従六位に叙せられた。わしとともに皇子尚薬を拝命した今村了庵と岡 了允も相応のご褒美が与えられた。

    残り1,835文字あります

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