株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

悪性軟部腫瘍における最新の化学療法【パゾパニブ,エリブリンなどの新薬の登場により治療の幅が拡大】

No.4827 (2016年10月29日発行) P.59

西村俊司  (近畿大学整形外科講師)

登録日: 2016-10-27

最終更新日: 2016-10-25

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

これまで,軟部肉腫の治療方針は手術による広範切除術であり,化学療法は補助的に用いられてきた。また,局所再発や遠隔転移による切除困難な症例には化学療法が施行されてきた。しかし,肉腫に効果を有する薬剤は限られており,主にドキソルビシン,イホスファミドを主体としたものであった。そして,効果不十分な例においてはsecond lineとなる薬剤がないとされていた。

近年,新たな治療薬としてVEGFRおよびPDG FR,c-Kitに対して阻害作用を持つパゾパニブ(ヴォトリエント)が登場し,肉腫に対する初の分子標的治療薬として既に承認されている。さらに2015年9月にはトラベクテジン(ヨンデリス),2016年にはエリブリン(ハラヴェン)がわが国で保険適用となり,特に粘液型脂肪肉腫で有効性が報告されている1)。わが国でもベストサポートケア群との比較試験で無増悪生存期間を有意に延長した薬剤である。エリブリンはわが国で創薬された抗癌剤で,チューブリン阻害作用により効果を発揮し,脂肪肉腫,平滑筋肉腫で有効性が認められている2)。また,再発乳癌には既に適応がある。いずれの薬剤も術前術後補助化学療法における有効性および安全性は確立されていないが,アントラサイクリン系抗癌剤およびタキサン系抗癌剤による化学療法施行後の増悪例や再発例に対して適応がある。これらの新薬により,治療の幅がさらに広がることが期待される。

【文献】

1) Grosso F, et al:Lancet Oncol. 2007;8(7):595-602.

2) Schöffski P, et al:Lancet. 2016;387(10028): 1629-37.

【解説】

西村俊司 近畿大学整形外科講師

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top