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進行肝細胞癌に対する集学的治療の進歩

No.4697 (2014年05月03日発行) P.58

石崎守彦 (関西医科大学外科教授)

權 雅憲 (関西医科大学外科教授)

登録日: 2014-05-03

最終更新日: 2016-10-26

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肝細胞癌は根治治療を行っても再発率は依然として高い。切除,局所療法,肝動脈化学塞栓術などの治療が繰り返されるが,最終的に多発肝内転移や脈管浸潤などの出現で制御困難となる場合が多い。進行肝細胞癌に対する分子標的治療薬ソラフェニブは,海外における第Ⅲ相臨床試験で生存期間と無増悪期間の延長が報告され,欧米で頻用されているBarcelona Clinic Liver Cancerガイドラインでも脈管浸潤例や遠隔転移例などの進行例に対し唯一推奨されている治療である。わが国でも2009年5月に承認され,新たな治療選択肢のひとつであるが,その奏効率は2~3%と低い(文献1,2)。
わが国では以前から進行肝細胞癌に対する肝動注化学療法が積極的に行われており,その奏効率は14~71%と報告されている。日本肝臓学会が提唱しているコンセンサスに基づく肝細胞癌治療アルゴリズム(2010年度版)でも,Vp3以上の門脈腫瘍栓を有する場合は,ソラフェニブに加え肝動注化学療法が選択肢に組み込まれている。また,肝動注化学療法による切除不能から切除可能へのconversion例も報告されており,進行例でも長期予後が期待できる治療と考えられる。しかし,肝動注化学療法が予後延長に寄与したRCTの報告がなく,海外では受け入れられていないのが現状である。現在,わが国で進行肝細胞癌に対するソラフェニブと肝動注化学療法の併用療法の臨床試験(文献3)が進行中であり,肝動注化学療法の有用性を世界に示しうる可能性が期待できる。

【文献】


1) Llovet JM, et al:N Engl J Med. 2008;359(4): 378-90.
2) Cheng AL, et al:Lancet Oncol. 2009;10(1):25-34.
3) 上嶋一臣, 他:Liver Cancer J. 2013;5(1):24-31.

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